アベノミクスが軍事目的?「内閣官房参与発言」報道は中国の対日プロパガンダの影響か

本田悦郎内閣官房参与が、ウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで「日本が力強い経済を必要としているのは、賃金上昇と生活向上のほかに、より強力な軍隊を持って中国に対峙できるようにするためだ」と語った、と報じられた。

筆者は、彼を大蔵省時代からよく知っている。彼は海外勤務が長かったが、筆者はしばしば彼の勤務地に出向いたものだ。彼から話を聞いてみたが、「そういうことは言っていない」と言っていた。

また、インタビューをしたアンドリュー・ブラウン氏は、北京支局勤務で、東京支局の記者なら必ず行っている事前チェックの依頼もなかったという。彼はとてもフレンドリーな人なので、親切心が徒になったのではないか。

筆者は、彼からの話を聞いて、直接の関係はないかもしれないが、中国が力を入れている対日プロパガンダのすさまじさを連想した。ブラウン氏は有能な記者であろうが、勤務地北京での対日洗脳を何度も受けているのかもしれないと頭をよぎった。

また、今年1月のはじめにイギリスで、中国の劉暁明・駐英大使が日本の右傾化を非難し、それに対して、日本の林景一・駐英大使が反論。その後BBCで討論したが、かなり激しかったことも思い出した。

軍事費の対GDP比は中国が日本の2倍

中国は、日本を軍国主義というが、それは69年前の話だ。その後、全く戦争をしていない。しかも、憲法によって交戦権を放棄したのは、かなりよく知られている。

実は、筆者は、1998年から2001年まで米国プリンストン大学に留学していたが、その間、バーナンキやクルーグマンらから金融政策を学ぶとともに、民主主義国同士では戦争をしないという「民主的平和論」(democratic peace)で著名なマイケル・ドイル教授の下で、国際関係論を学んだ。

「民主的平和論」のルーツは、カントの『永遠平和のために』(1795年)などにある。そこで、多くの人は自衛以外での戦争を望まないとしている。ドイル教授は、こうした考え方を整理して理論づけてきた学者の一人だ。

彼は、民主国家同士の交戦可能性が相対的に低いのは社会科学的事実だとしている。その理由は、共通の価値観を持ってイデオロギー対立がなくなること、複数政党を背景にして議会主義的交渉能力が発達していること、マイノリティの言論の自由が保護されていること、情報がよく公開されていること、民主主義国では戦争の大義がないことなどが挙げられる。

ここで、民主主義国とは、男女普通選挙、複数政党制、報道の自由の確保などが基準になっている。中国は共産党の一党独裁、報道は共産党の広報で自由が確保されていないので、民主主義国とはいえない。一方、日本は曲がりなりにも民主主義国だ。「民主的平和論」からいえば、中国のほうにより大きな問題があるということになる。

そうしたことは、軍事費の推移だけをみてもわかる。軍事・防衛費は数字なのでわかりやすい反面、各国の定義が異なるので慎重な扱いが必要だ。ここでは、定評のあるスウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI:Stockholm International Peace Research Institute)の軍事費支出データベースをとり、その分析を行うこととし、本文中のデータ・図の出所とする。

まず日本の軍事費の対GDP比は1%であるが、これはデータのある世界139ヶ国中30番目の低さである。一方、中国は2%と日本の倍である。

しかも、中国の軍事費の伸びはすさまじい。日本の周辺国だけをみても、中国の軍事費の伸びは突出している。

そうした軍拡を実際に行っている中国が、日本を軍国主義というのは、冷静に見れば、かなり滑稽な話だ。もちろん、菅官房長官がすぐに否定したように「アベノミクスは軍事目的ではない」。

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