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元副会長、ウォークマンの産みの親ほか かつての幹部が実名告白 あぁ、「僕らのソニー」が死んでいく
週刊現代 プロフィール
第3四半期の決算発表の場で平井社長は1100億円の赤字見通しとパソコン事業の売却を発表した〔PHOTO〕gettyimages

ジャパン・アズ・ナンバーワンの象徴だった。オーディオ・ビジュアルの技術で人々を魅了し、次々と世界を変えていった。日本人として何だか誇らしかった。あの頃の輝きはもう取り戻せないのか。

ソニー精神の火は消えた

「さみしいよね。優秀な人はいるんだけど、優等生ばかり。今みたいにリストラを重ねると、余裕がなくなってしまうからねえ。昔もみんな忙しかったけれど、どこかに余裕を見つけて、勝手に自分の好きなことをやっていた。そういう中から新しいビジネスの種が育っていたんですよ。このままの状態では、ソニーはますます小さくなってしまうかもしれない」

初代最高財務責任者(CFO)や副会長を務めた伊庭保氏でさえ、現在のソニーの苦境をこう嘆く。それほどに、ソニーが抱える病巣は根深い。

ソニーは今期の連結決算見通しを300億円の黒字から1100億円もの赤字へと大幅に下方修正した。今月22日には、北米で販売台数を伸ばす家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)4」の国内発売も控えるが、これが消費者に支持されるかは未知数。円安効果でパナソニックや日立、シャープさえも好決算を発表するなかで、ソニー一人負けの構図なのだ。

平井一夫現社長は2月6日、巨額赤字への対応策として、長年培ってきたパソコン事業「バイオ」の売却を公表した。あわせてテレビ事業の分社化と、国内外で5000人規模のリストラを行うことも発表。ソニー社員のみならず、日本社会に衝撃を与えた。

ソニーは、トランジスタラジオに始まり、テレビ、ウォークマン、ハンディカム、PSなど、エレクトロニクスメーカーとして、多くの画期的な製品を世に送り出してきた。その革新性に魅せられたユーザーにとって、ソニーは憧れの存在だった。そのブランドイメージが崩壊しつつある。

今回、本誌は複数の元幹部に接触した。彼らの口からは、「私たちの知っているソニーが死んでいく」と悲愴感溢れる言葉が漏れる。

たとえば、全世界にソニーの名を知らしめたウォークマンの産みの親で、後に副社長を務めた大曽根幸三氏はこう言う。

「今の平井社長はエンタテインメント部門出身で、これからのエレクトロニクスの世界がどうなっていくか、先読みできるセンスがあるとは思えない。ハワード・ストリンガー前社長にいたっては、米国の映画やテレビ界の裏をよく知っているというだけで、社長に引っ張ってきた人ですよ。

それにしても、ソニーは変わってしまった。われわれの世代が築いた技術屋の魂は受け継がれていない。人事部や営業部出身で、技術の先読みができない文系の人間が出世している。もうソニー精神のかけらも残っていないでしょう」

ソニーというブランドは、世界中の起業家を惹きつける魅力を持っていた。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏も、アップルを創ったスティーブ・ジョブズ氏も憧れた。大曽根氏とは別の副社長経験者は言う。

「ジョブズもソニーによく遊びに来ていたし、その前にはビル・ゲイツも重要な用事がなくても気にせずにやってきたと(元社長の)大賀典雄さんから聞いています。それくらい、創業者の井深大さんや盛田昭夫さん、そして大賀さんに憧れていたんです。それはなぜかというと、ソニーが世界にないものを創って、米国に紹介していたからです」

それが今や立場は逆転、ソニーはアップル向けに部品を供給する立場になった。最近もアップルの新型iPhoneにカメラ部品を大量供給する交渉に入ったと報じられたばかり。亡きジョブズが憧れたソニーは、アップルの「下請け」になり下がったのである。

'06年にソニーを退職し、グーグル日本法人社長などを歴任した辻野晃一郎氏はこう振り返る。

「私はソニーをやめる直前まで、アップルに対抗するためのビジネスを構築しようと必死になっていました。ところが、ある役員から『そんなことはやめてアップルに頭を下げてこい』と言われたんです。そのとき思わず、『あなたにはプライドはないのか』と聞き返しました。戻ってきた言葉は『プライドで会社が儲かるのか』。当時からすでにアップルの軍門に下るシナリオが進行していたということです」

ソニーの凋落を示す象徴的な話だが、いったい何がソニーを変えてしまったのだろうか。元幹部たちの話を総合すると、その原因は以下の3点に要約される。

●経営陣の劣化
●米国型経営の導入
●モチベーションの低下

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