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「女は家で子育てしろ」って、したくてもできない人がいるんです 安倍ブレーン(長谷川三千子 埼玉大学名誉教授) とても変な女性評論家
妻・昭恵さんの意見を、安倍総理は容れる素振りも見せないが……〔PHOTO〕gettyimages

「女は子供を生み育てるのが仕事」「今上陛下は神になられた」—安倍総理の「応援団」を自任する女性ブレーンの主張だ。妻の声には耳を貸さない総理の行く末が、ますます心配になってくる。

昭恵さんの気持ちがわかるか

「女性の社会進出の歴史をよくご存知のはずの長谷川さんのような方が、あえてこうした主張を述べていることには驚きを隠せません。単に知識のない人が言うのとはわけが違う。

そもそも、男女共同参画という考え方は、女性は働いても子育てをしてもいい、男性だけでなく女性も、自分の生き方を自分で決められるような社会を作ろうという趣旨なのです。

これまで世界中の女性たちが、自立した人生を獲得するために努力してきた。長谷川さんの発言には、その歴史をいっぺんにひっくり返そうというような印象を受けました」

こう違和感を寄せたのは、精神科医の香山リカ氏だ。

安倍総理の「お友達人事」が、大きな波紋を呼んでいる。総理の肝煎りで、NHKの経営委員に就任した人物が、問題発言を繰り返しているのだ。

2月12日には、NHK経営委員長の浜田健一郎氏が異例の緊急会見を開き、

「経営委員一人一人が、公共放送の使命と社会的責任を深く自覚するとともに、一定の節度をもって行動していくことを、改めて申し合わせた」

と釈明する事態に。中でも、世間を驚かせるとともに、激しい追及を受けているのが、長谷川三千子経営委員(67歳)のこんな主張である。

〈女性の一番大切な仕事は子供を生み育てることなのだから、外に出てバリバリ働くよりもそちらを優先しよう。そして男性はちゃんと収入を得て妻子をやしなわねばならぬ〉(1月6日付、産経新聞より)

長谷川氏は'78年から埼玉大学で教鞭をとり、現在は同大学名誉教授(専門は哲学)で評論家。作家・野上弥生子を祖母に、元法政大学総長・野上豊一郎を祖父にもつなど、知識人一族に生まれ育った人物だ。自身は大学教員の傍ら、二児を産み育てている。

「12人の経営委員は、NHKの予算・番組編集計画などを決める、いわば日本最大のメディアを握る人々です。長谷川氏に関しては、総理補佐官の衛藤晟一参議院議員など、親しくしていた保守系議員からも推挙があった。

彼女は安倍総理が信頼する政策ブレーンで、とりわけ教育に関する問題意識が共通している。二人の結びつきは強い」(官邸スタッフ)

本誌先週(2月22日)号では、長谷川氏の主張に対して、エッセイストの酒井順子氏が連載コラム上でこんな指摘をした。

「長谷川さんにさらにお願いしたいのは、子供を持たない安倍首相に対する批判です。少子化と人口減少という国家の非常時に、首相が子供無しという状態でいいのか。(中略)側室にでも産ませて安倍家の血を残せ、国民に範を示せ(中略)と。そのような批判をされたらもちろん、安倍さんは反論なさることでしょう。我々夫婦も子供は持ちたかった。しかし諸般の事情があって持つことができなかったのだ。そんな個人の様々な事情を理解できるような社会であるべきなのではないか、と」

まさにその通り。結婚し、子供を生み育てるという行為は、他人から強要されるようなものではない。また、長谷川氏の主張するように子供を持ちたいと望んでも、それが叶わない女性も少なくないのだ。

事実、安倍総理が初めて総理に就任した直後の'06年秋、妻の昭恵さんは不妊治療、そして子供を授からなかったことについて手記で告白している。

〈憶測で書かれるよりも、自分の言葉できちんと説明しておきたいと思います。(中略)いまでこそ、年齢的にも難しいでしょうから、「頑張りなさい」とは言われませんが、ごく初期のころは不妊治療も受けました。(中略)私は、政治家の妻になったことも、主人が総理大臣になったことも、子どもに恵まれなかったことも、すべては運命であり、それを受け入れるべきだと考えています。育児の代わりに何かほかのことで社会のお役に立ちなさいという、私に与えられた使命ではないか〉(『文藝春秋』'06年11月号より)

国内の不妊治療総件数は、'10年に24万件を超えた。そして安倍総理・昭恵夫妻も、紛れもなくそうしたカップルのひとつなのだ。

にもかかわらず、「女は子供を生み育ててナンボ」と言ってはばからない人物をNHKの要職に登用する安倍総理。総理と長谷川氏は、昭恵さんの、そして生みたくても生めない世の女性たちの苦悩を、理解しているのだろうか。

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