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世界一の投資家ジョージ・ソロスが「日本株売り」これから何が起きるのか ダボス会議で安倍と会談した直後、あの男が動き出した
巻頭大特集アベノミクスに「大異変」!
〔PHOTO〕gettyimages

外国人投資家が次々逃げ出す?本格的な下げが始まる?

40年以上にわたり年平均20%の利益を上げてきた「投資の神」は、83歳のいまも前線に立つ。相手の蟻の一穴を突くや、兆円規模のカネをつぎ込んでなぎ倒してきた。狙われたらひとたまりもない。

「安倍はリスクを選んだ」

出会いの握手があれば、別れの握手がある。世界一の投資家、ジョージ・ソロスが安倍晋三首相と結んだその手は、「グッドバイ」のメッセージを告げていた。

「ソロスが日本株売りを仕掛けているぞ」

スイス・ダボスで開かれた世界経済フォーラムで、ソロスと安倍首相が会談したのは現地時間1月22日の午後である。マーケットにソロスの「日本売り」の噂が駆け巡ったのは、会談後間もなくのことであった。

左ページ上の写真は、二人が「握手」をしたその瞬間をとらえている。

ソロスの右手には、老練な駆け引きで挙げた「勝ち星」を刻むようにいくつものシミが浮かんでいる。推定資産2兆円という天文学的な額を、その手で一代で稼ぎあげてきた。

地球儀を眺め回すように、いとも簡単に世界中の経済事情を射抜く青い目は、この日、20歳以上年の差がある「若造」の力量を試すように見開かれていた。

ソロスは見抜き、そしてつながれた手は離れた。

翌23日、東京株式市場は朝方こそ買いが入り日経平均株価は上げ基調で始まったが、午後に入ると海外勢とみられる売りが加速し、3日ぶりの反落となった。

24日に入ると、市場が開くや怒濤の売りが殺到。東京株式市場ではほぼ全面安の展開となり、フタを開ければ東証一部の9割以上の銘柄が値下がり、日経平均はほぼ1ヵ月ぶりの安値に落ちた。

週が明けた27日も海外投資家を中心とした日本株の売りは止まらず、日経ジャスダック平均株価が約7ヵ月ぶりの下落率を更新。28日には日経平均が終値でついに1万5000円を割る事態にマーケットは騒然となった。

そして日本株は停滞から抜け出せず、2月4日には日経平均が一日で610円も下げる強烈な売りを浴びせつけられた—。

「興味深いのは、日本株買い・円売りをしてきたヘッジファンドを中心とする海外勢が、安倍・ソロス会談を機に、まったく逆の取引を加速させていることです。東京外国為替市場でも、安倍首相とソロスが会談した翌日から円高に振れ、24日には年初来最高値を1ドル=101円98銭で更新しています」(RFSマネジメントのチーフ・エコノミストである田代秀敏氏)

倒す相手が大きいほど、手に入れる儲けも大きく膨らむ。だからこそ、ソロスは最も巨大な相手である「国家」に勝負を挑み、巨万の富を得てきた。

'92年にイギリス政府を相手に投資戦を挑み、打ち負かしたのはマーケット史に残る伝説のトレードとして語り草になっている。ソロスの巨額のポンド売りに、買い支えようとしたイングランド銀行(英中央銀行)はもろくも屈服した。

'97年にはタイ・バーツに売りを仕掛け、タイ政府は支えきれずに相場は急落。これが引き金となってアジア通貨危機が始まったことで、マレーシアのマハティール首相(当時)がソロスを「危機の元凶」と名指しで批判したとの逸話も残る。

そのソロスが次のターゲットを日本に定めたとすればただ事ではない。

実はソロスは、不気味な「宣言」を残している。

今年1月2日、チェコ共和国のプラハに本拠地を置くNPO『プロジェクト・シンジケート』のウェブサイトにソロスの寄稿文が掲載された。プロジェクト・シンジケートは、世界中の著名な政治家、研究者、実業家などの論評を掲載する知る人ぞ知る世界的な言論機関である。日本ではほとんど注目されていないが、ソロスはその寄稿文で日本経済について次のように評していた。

〈(黒田東彦総裁率いる日本銀行が昨年から始めた)大規模な量的緩和は、リスクのある実験。成長が加速すれば金利が上昇し、債務支払いのコストが維持できないものになる。しかし、安倍首相は日本を緩やかな死に処すより、そのリスクを取ることを選んだ。人々の熱狂的な支持から判断すれば、普通の日本人も同じように考えているのだろう〉

元スイス銀行のトレーダーで、世界の市場動向に詳しいマーケット・アナリストの豊島逸夫氏が言う。

「この文面を読めば、ソロスは積極的に日本株を支持していないと読めます。昨年春にも、ソロスは米CNBCのインタビューに答え、『黒田日銀が引き起こした円安は雪崩となり、止められなくなるかもしれない。危険な政策だ』と警鐘を鳴らしています。巨額な財政赤字を抱える日本経済を立て直すには、金融政策だけでは不十分だというのがソロスの見方なのです」

かつてソロスのアドバイザーを務めたことがあり、現在は参議院議員の藤巻健史氏は言う。

「ソロスが日本株売りを実際に指示したかどうかはわかりません。ただし、確実に言えるのは、日本株を買い増してきた海外のヘッジファンド勢がアベノミクスへのスタンスを変えたということ。彼らは日本株から引き始めています」

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