ドイツ
「死のお手伝い」は殺人の婉曲か、人間の尊厳を表現する究極の形か---ベルギーで法案が通過した未成年の安楽死について
〔PHOTO〕gettyimages

今週のテーマは、とても難しい問題。安楽死だ。それも、未成年の安楽死。

ベルギーの新しい法律で、まもなく未成年者の安楽死が認められるようになる。私は一応、安楽死と訳したが、これは延命措置をしないという意味ではなく、積極的に手を貸して患者を死なせてあげるということだ。たとえば注射で。

賛否両論を巻き起している未成年の安楽死

現在、EU内で成年の安楽死が認められているのは、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの3ヵ国。しかし、そのベルギーにおいても、この度の法案についての議論は、テーマがテーマだけにとても激しく、また、感情的なものだったという。その結果、2月13日、予想に反して85対46という大差で法案は通過した。棄権は12票。

社会党など左派は、概ねこの法案に賛成だ。「苦しみに年齢制限はない」という理由で。生き延びられる可能性がないのに苦しみが大きい場合は、未成年者であっても、医者や保護者と話し合い、自分の人生を終える権利があるはずだというのが彼らの考え方だ。

一方、保守派には反対意見が多い。保守陣営は、命を人間の手で操作することに大きな躊躇を示す。それが命の始まりであっても、終わりであっても。

いずれにしてもベルギーの医者はまもなく、一定の条件の下でとはいえ、未成年の患者を死なせるために、注射や投薬ができるようになる。

条件とは、親の同意があること、不治の病であること、薬で取り除けない激しい苦痛があることで、さらに、心理学者が、その患者が自分で決定する能力があると保証する必要がある。つまり、判断能力のない赤ん坊や小さな子供にはこの法律は適応されない。

また、どの患者に、どの時点で、安楽死選択の可能性のあることを知らせるのかという問題もある。安楽死の可能性を示唆するということは、あなたはもう助かりませんと言っているに等しい。

新しい法律によれば、医者と、法律家と、倫理の専門家でグループを作って、重病の子供に安楽死について知らせるかどうかを決めるというが、どこか無理があるように感じるのは、私だけだろうか。

興味深いことに、終末期の医療に携わっている医師や看護師などで、この法律に強く反対する人たちは多い。あらゆる方法で痛みや苦しみを取り除いてあげて、やがて訪れる死を苦しくないものにすることが終末期医療の役割であり、死なせることではないと、医師たちは主張する。

また、インタビューを受けたベテランの看護師は、「『もう治療はたくさんだ。髪は抜けるし、辛いし』と言いながらも、子供は大人よりも生きたいという意志が強い。私は、病気の子供が『もう死にたい』と言ったのを一度も聞いたことがない」と、やはり強く反対していた。教会と患者同盟も、同じく反対組だ。

もっとも、医者と両親にとって、子供の苦しみを終える方法が合法的に保障されたということはよいことだと見ている医師も、もちろんいる。要するに、文字通り賛否両論なのだ。

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