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米グーグルやフェイスブックらに続いて、オンライン動画配信業者ネットフリックスも先日、次世代AI「ディープラーニング」の導入を発表した。
●"Distributed Neural Networks with GPUs in the AWS Cloud" The Netflix Tech Blog, February 10, 2014
一体、ディープラーニング(Deep Learning)の何が、彼ら世界的IT企業をそこまで惹きつけるのだろうか?
それは脳の仕組みを取り入れたことによる汎用性、つまり、どんな目的にも対応できる脳の柔軟性に起因すると見られる。ディープラーニングはこれまで、グーグル音声検索の基礎となる音声認識技術、あるいはユーチューブに投稿された動画などを判別する画像解析技術などに、大幅な性能向上をもたらした。
今回、ネットフリックスはこの技術を使って、ユーザーの過去の利用履歴から、どんな映画やテレビ番組を好むかを自動的に推定するレコメンデーション機能を改良しようとしている。つまりディープラーニングはかなり広範囲な用途に使うことができる上、まるで自分のことをよく知っている友達が「君も、この映画が気に入ると思う」と推薦してくれるような、人間的温もりを帯びたAIさえ実現するかもしれないのだ。
一方、純粋科学の側面から見ると、そこには脳・神経科学のロゼッタストーン、つまり人間の認知機構の謎を解明する鍵も隠されている。ディープラーニングには「スパース・コーディング(Sparse Coding)」と呼ばれる脳・神経科学の仮説が導入されている。
つまりディープラーニングというAI(人工知能)が多方面で大きな成果を上げれば、それは間接的に「スパース・コーディング」の正当性を立証したことになり、人間の認知機構を統一的に解明する上で、偉大な一里塚になるのだ。2回連載の後半となる今回は、ここに至る歴史を簡単に振り返り、今後の行方を展望する。