サッカー
二宮寿朗「W杯、懸念されるスタジアム問題」

 ブラジルW杯で使用するスタジアムの完成が遅れているという。開幕まで残り4カ月を切っているのだが、開幕戦(6月12日、ブラジル対クロアチア)の舞台となるサンパウロのイタケロンスタジアムを含む5会場(他にマナウス、クイアバ、クリチバ、ポルドアレグレ)が未完成のままになっている。クイアバのパンタナルスタジアムは日本対コロンビア戦の会場でもある。12会場の半分近くが完成していないというのは異常事態と言っていい。

サッカー王国“威厳の失墜”

 工事が大幅に遅れている理由としては、インフレの影響による資材の高騰、人件費など資金繰りの難しさに直面していることが関係していると思われる。とはいえ、まずもって「事前計画」がずさんと言わざるを得ない。

 スタジアム新設・改築費用は既に70億レアル(約3010億円)を投入していて、今後もさらに増えることが予想される。2006年のドイツ、10年の南アフリカの費用と比べると2倍の数字だ。筆者の記憶によれば、公的資金は投入しないという説明だったはずだが、実際は会場のほとんどが公的資金を投入しての建設となっている。費用がかさんで建設業者への入金が遅れ、工事がストップするという事態もあったようだ。さらにマナウス、サンパウロでは建設作業中に死亡事故が起きている。安全性の見直しを迫られたことも響いているのかもしれない。

 工事の遅れが意味するのは「威厳の失墜」だ。ブラジルは仮にもサッカー王国だ。スタジアムは山ほどあるだろうし、同じく工事遅れが懸念された南アフリカとは事情はまるで違う。にもかかわらず莫大な費用をかけたうえに、結局は金銭的な理由から工事が遅れてしまうというのはちょっと理解しがたい。国内的な事情や構造的問題があるにしても、W杯最多優勝数を誇るサッカー王国が引き起こしている現実の光景は、極めて残念でならない。