大震災から約3年、福島の市井の人々を地道に追い続ける地元テレビ局に対し、NHKは原発問題をどう追うのか?
NHK東日本大震災復興プロジェクトHPより

NHK東日本大震災プロジェクトの復興支援ソング「花は咲く」は東北出身者や東北と縁の深い著名人たちによって歌われているが、その中には福島県双葉郡浪江町出身者もいる。民謡歌手の原田直之(71)だ。着物姿で抜群の歌唱力を見せつけている。

原田の生まれた浪江町は原発事故により全町避難中。震災から約3年が過ぎた今も福島の受難は現在進行形だ。しかし、汚染水問題など原発事故処理の報道を除くと、全国ネットのテレビが発信する情報量は減少の一途をたどっている。とくに市井の人の暮らしを追った映像は少ない。

秀作ぞろいの地元局が制作したドキュメンタリー

無論、地域と寄り添う地元テレビ局は地道に番組制作を続けている。被災前は経済が比較的良好だった同県には民放が4局ある。その地元局が制作したドキュメンタリーの上映会が、3月11日~30日に横浜で行われる。『今、福島から伝えること~3.11大震災・福島原発事故を忘れない!~』(放送ライブラリー)。秀作ぞろいだが、入場は無料だ。

まず、福島中央テレビ(日本テレビ系列)が制作した『「今、伝えたいこと(仮)」福島・女子高生の叫び』。原発災害は大人の目線や子供への影響で報じられるケースが目立つが、多感な10代の被災との向き合い方を捉えた作品で、昨年2月に『NNNドキュメント』で放送され、話題になった。

原発事故後、ネット上には「福島県民は放射能まみれ。ワロタ~」、「放射能うつすんじゃねーよ」といった心ない匿名の書き込みが溢れ、これを見た福島の若者たちは絶望の淵に追いやられた。一部の大学教授までが「福島の女性と結婚するな」といった趣旨の差別的発言を行ったのだから、無理もない。

そんな中、原発から約45kmに位置する県立相馬高校の女子生徒たちが、演劇を通じて胸の内を伝えよう決意する。大人たちが口に出来ない福島の現実も芝居で表そうとした。女子高生たちの本音が詰まった劇が、観客の胸を揺さぶり、ドキュメンタリーを見る側の胸も突く。

フジテレビ系列の福島テレビは『キ・ボ・ウ~全損避難 福島県飯館村二年の記録~』を上映する。ちょっと複雑なのだが、東京での放送は昨年2月、テレビ朝日が行った。福島テレビは民間放送教育協会の加盟社で、その中心局がテレ朝であるためだ。テレ朝がもとは民放版教育テレビ(NET=日本教育テレビ)だった名残だ。

カメラは原発から30km以上離れた人口約6000人の村を約700日間、淡々と追った。阿武隈山系に位置する美しい村の人々が直面した悲劇と苦悩が映し出されている。

原発から距離のある飯館村は原発の恩恵を受けていた訳ではないし、事故直後に一部の学者が「心配ない」と無責任な発言をしたこともあり、村民は安心していた。しかし、実際には原発から流出した強い放射性物質が雪に混じり、村に降り積もった。

村を追われることになった人々は行政に翻弄され、離散生活に疲れ、やがては村の在り方をめぐって対立せざるを得なくなる。すべて事故のせい。希望だけは残っているのが救いだが、穏やかな暮らしがいつ戻って来るかは分からない。

TBS系のテレビユー福島は『それでも希望のタネをまく~福島農家2年めの試練』。原発から約50㎞に位置する二本松市で有機農業に営んできた農家が、災害に屈することなく、再び安全でおいしい米を作ろうと懸命に努力する姿を捉えた。

いま、福島から出荷される米などの農産物は、もちろん厳しい検査をパスしているが、いまだ消費者の間で物議を醸しているようだ。このほど福島県商工会連合会が発表した昨年12月の調査によると、首都圏の一般消費者で県産品を「買わない」と答えた人は30.2%。一昨年9月の前回調査は30.4%で、ほぼ同水準のまま。買う人、買わない人、いずれも福島の農業の実情を映像を通じて見る価値はあるだろう。

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