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ソウル&釜山で新事実発覚! 怪死 対馬海峡に消えたキャリア官僚「最期の3日間」

「アイ・アム・アレックス」

福岡県の玄界灘の東にある北九州市・若松区沖の響灘。1艘のゴムボートが浮いているのをプレジャーボートの船長が見つけ、118番通報したのは1月18日。

〈中に人が倒れている!〉

米国ミネソタに留学し、韓国で学会に出席していたはずの内閣府のキャリアが遺体で見つかった怪死事件の幕開けだった。

彼は、なぜ真冬の対馬海峡に漕ぎ出し、命を落としたのか?

謎が謎を呼ぶ不可解きわまる状況。本誌は韓国での現地取材で最期の足取りを追い、いくつかの新事実が判明した。そしてカギとなるのは「空白の3日間」であることを突き止めたのだ。

亡くなった職員S氏は愛知県半田市出身で、30歳。東大合格者を多数輩出してきた県立の名門高校に進学し、海外留学したことで1年、卒業が遅れた。

大学は再び海外に。カナダのマギル大学に進学し、のち東京大学大学院で経済を研究。'11年内閣府に入る。'13年7月から同府経済社会総合研究所の長期在外研究員としてミネソタ大学大学院に留学した。

将来を嘱望されたエリート研究員のS氏。だが年明けから謎の行動が始まる。S氏は1月8~10日に開催されるAPSSC(アジア太平洋社会科学学会)に出席するため7~12日の予定で韓国に入ると内閣府に申請した。しかし実際には4日にソウル駅に近い若者向けゲストハウスに本名でチェックインしている。

6日16時頃、S氏はソウル市庁舎に近い西小門交番で、「パスポートケースをなくした」と本名で遺失物届を出した。本誌の取材に対し交番の所長は、彼がソウル市内のIホテルを連絡先として届け出たと話す。だがIホテルに確認すると、S氏らしき人物は宿泊名簿にないという。この届けは「まるでソウルにいたというアピール。アリバイ作りか」とも報じられたが、少なくとも連絡先については虚偽だった可能性が高い。

一方、同日17時頃、香港人のアレックス・ポーと名乗る人物が、ソウル市内のボート販売業者を訪れる。女性担当者はこう証言する。

「彼は最初、間違って隣の会計事務所に入り、英語で『ボート』と言いつづけたので、こちらに案内されてきた。身長は170cmほど、痩せていて顔が白く、前髪を下ろしていた。マスクで顔が半分以上隠れていた。手が小さくてきれいだった」

本誌がS氏の複数の写真を女性に確認してもらうと、「この人だと思う」と証言した。韓国語は話さず、終始英語で通した。女性は英語が不得意なため、「中国語は」と訊ねると「できない」と答えたという。

「最初に彼がほしがったゴムボートが生産中止になっていたのでAM230という製品を勧めました。また電動の船外機ENDURA55も購入しました」

S氏は、韓国の高速鉄道KTXで釜山に行くが、品物を電車で運べるかと問うた。だが、ボートの重量は約35kg。女性は無理だと話し、配送先を訊ねた。

「彼は電話番号や住所は教えず、あとでメールで知らせるからと私の名刺を持っていった。代金100万ウォン(約10万円弱)は現金で支払いました。おカネは封筒から出しましたが、まだ結構な額が残っていた」

7日9時32分から複数回、アレックス・ポーは女性にメールをしている。本誌はその原文を入手した。

アレックス〈昨日、購入した商品を次の場所に送ってください。/ホテル:T2/住所……〉

女性〈すみません、ホテルの部屋番号は?〉

アレックス〈まだわからない。フロント宛に送ってください。私はすぐに商品を受け取らなければならないのです〉—。

同日、S氏はソウル市内の別のホテルMのフロントにパスポートやパソコンの入ったカバンを偽名で預けた後、旧知の友人に会ってソウル巡りをしたという。友人には「政府の留学生はなかなか日本に帰れない」とこぼし、16日に帰米する飛行機を予約したと話した。本誌が2月5日に確認したところ、ホテルMには荷物が預けられたままで、日本政府関係者や家族からの接触はないという。

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