「経常収支赤字で日本経済が危ない」は俗説!マスコミ報道に騙されるな

2014年02月17日(月) 高橋 洋一
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通常は、貯蓄が習慣的なものなのでなかなか変動しないかわりに、投資はずいぶんと動くので、投資の多寡が経常収支を決めることがしばしばだ。しかし、この因果関係は決定的ではないので、そこに活路を見出して、ISバランス論で言う経常収支=貯蓄-投資、という関係は一方的な因果関係を示さないといって、相手を混乱させるのがいい、と当時若かった筆者は省幹部に話したことがある。

当時でも今でも同じだが、公共投資が必要だというロジックがあると、とりあえず反論しておき、それでも頼まれたら、相手に恩を着せて公共投資予算を認めるのというのが、財務省の一貫した考え方である。筆者の便法は、そのはじめの反論に使われたのに過ぎないとわかるまでに、時間はかからなかった。

赤字=損という「重商主義の誤謬」

いずれにしても、当時の大蔵省は表に出ずに、ISバランス論はおかしいといっていた。しかし、さすがに、経済学者からみれば、その論法はあまりにお粗末なので、経済学者で言う人はいなかったと思う。

当時、筆者は、経常収支の黒字そのものはたいした話でないと言えば、経済学者も大蔵省の主張に賛同してくれるともいった。ただし、当時の上司は、相手が米国で、政治的に日本に圧力をかけてきているので、意味ないだろうということだった。しかし、大蔵官僚は法学部出身ばかりなので経済学は苦手で、経常黒字がよくて赤字が悪と思い込んでいる感じがした。

もっとも、筆者の記憶では、渡辺氏は経常収支の黒字、赤字がさしたる意味がないことをよく理解していたように思う。

多くの人は、前提として、貿易で儲かる=黒字、貿易で損する=赤字という貿易を行う会社の業績と業態に関して使われる企業の黒字・赤字をそのまま貿易黒字・赤字と考えてしまっているのだろう。貿易黒字といっても、財貨を輸出して代金をもらっているだけ。国内で消費すべきものを輸出して、消費機会が失われてハッピーなのだろうか。消費してハッピーなので、代金をもらってハッピーなはずない。

貿易収支または経常収支の黒字を「得」なこと、赤字を「損」なことと考えるのは経済学にとって初歩的な誤りで、それを「重商主義の誤謬」という。貿易収支の黒字は輸出のほうが輸入より多いことで、別に国にとって得でも損でもない。カナダのように経常収支が100年以上もほとんどの年において赤字でも、立派に発展してきた国もある。アイルランド、オーストラリア、デンマークなどの経常収支は第2次世界大戦以降、だいたい赤字であるが、それらの国が「損」をしてきたわけでない。

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