【文部科学 その9】 2020年東京五輪を目標に、日本文化のすそ野を広げ世界へ発信せよ!

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2013年は、ユネスコが富士山を世界文化遺産に、和食をも世界無形文化遺産に登録するなど、世界的に日本文化への関心が高まった年であった。折しも、2020年の東京オリンピック開催が決まり、世界中から多くの外国人観光客、著名人、外国マスメディアなどが日本を訪れ、大いに日本に注目することが確実になった。

その2020年をひとつの目標にして、今こそ国を挙げて日本を文化大国に磨き上げるべきだ。オリンピックによる日本への注目度の飛躍的な向上を一過性のものにすることなく、それを機に日本文化の魅力を海外に発信し、日本文化のプレゼンスを圧倒的に高める。そのためには、今から明確なアクションプランを立て、日本の文化・芸術に磨きをかけていくことが、必要だ。

もとより、国家の「国力」を考える際、軍事力などのハードパワーだけでなく、文化力などのソフトパワーの重要性は極めて高い。

ジョセフ・ナイの提唱したソフトパワーは、「国家が軍事力や経済力等によらず、その国の文化や価値観に対する理解、共感、支持を得ることにより、他国を味方につけて、国際社会からの信頼や発言力を獲得する力」のことで、国家間の直接的な軍事衝突の蓋然性が低下した今日の相互依存的な国際社会において、その重要性を増している。「100の行動」18【外務4】において、日本のソフトパワーを高めることの重要性について述べたのはそのためだ。

したがって、国家の文化力を高めることは、我々日本人の個々の人生・生活を豊かにすることはもちろんだが、それだけでなく、国家のソフトパワーを高めることで政治的にも国益に適うものだ。さらには、映画やアニメ、音楽などのコンテンツ産業、インバウンド・観光産業を含めた文化関連産業の拡大によって経済にも寄与する。

1. アートにマネジメントの視点を導入せよ!

日本人の文化度の高さ、洗練さは世界が認めるところだ。クラシック音楽、最近ではバレエ、建築、映画、漫画アニメ、村上春樹など、多様な分野で日本人の芸術性と美意識が評価されている。また日本ほど古代から現在までの文化財が蓄積され、大切に保管され、広く深く残っている国はない。中国も欧州も、他民族の征服があるたびに、地域の伝統が壊され、文化財が破壊されてきた。

結局、文化への潜在的需要が強い(内閣府の調査では、「心の豊かさ」を求めるひとの割合が、高度成長期の40%から、いまや60%強に増えています)にも拘わらず、またすばらしい才能や文化財があるにも拘わらず、それがうまくつながってこなかったのは、いわゆる「アートマネジメント」がお粗末だったからだ。

三ツ星級のシェフと、おいしいもの好きの消費者が並んでも、そこには何も起こらない。朝早く良い食材を手に入れ、季節らしいメニューをつくり、しゃれた内装のレストランをつくり、それをHPで紹介する役割を果たすひとが必要なのである。

日本の政府も学校も、才能あるひとにまかせっきりで、文化の需要と供給を結ぶシステム(学芸員やプロデューサーの育成と支援、つまりレストラン経営者の支援)をやってこなかった。レストランがなければ折角のシェフの能力も生かせないのだ。

これがアートマネジメントである。個々の美術館や音楽ホールでのマネジメントと同様に、国レベルでのアートマネジメントが必要である。そのためにも、アートにお金を出す国民を増やし、特色がある美術館や博物館を増やし、伝統文化を身近なものにして、税制優遇をして市場のすそ野を広げる努力をするとともに、アートのマネジメントができる人材を育成する必要がある。グロービス経営大学院でも積極的にアートマネジメントのコース等を新設して、この動きを後押ししたい。

また、一昨年できた「劇場法」は、国全体にそうしたアートマネジメントの機能が強まることを窮極の目的とするものである(近藤誠一前文化庁長官の寄稿に基づき執筆)。

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