【文部科学 その10】 宇宙開発を研究中心から防衛・事業中心へと発想転換せよ!
H-2Aロケット打ち上げの様子〔PHOTO〕gettyimages

小惑星探査機はやぶさが世界で初めて月以外の天体小惑星イトカワの固体表面に着陸してサンプルを採取して地球に帰ってきたのは2010年のことだ。日本の宇宙技術の高さを示す出来事であり、今後の宇宙工学の発展にも大きく寄与する偉大な成果といえよう。

しかし、はやぶさの成功がクローズアップされる日本の現状は、あまりにも研究に偏っている日本の宇宙政策の姿を現しているともいえよう。世界の宇宙政策は、もはやビジネスの世界での競争に移っているのだ。

アメリカのSpace Foundation(宇宙財団)が発行する「Space Report」によると、世界の宇宙産業の市場規模(商業ベースと政府の宇宙支出の合計)は、2012年で3,043億1,000万ドルと巨大で、過去5年で37%拡大している。

今後も世界の宇宙産業の市場規模は拡大していくだろう。もともと世界の宇宙開発を牽引してきたアメリカ、ヨーロッパ、ロシアは、以前から宇宙の産業化、宇宙ビジネスの展開に力をいれている。

欧米だけではない。中国は、低コストを武器に商業衛星の打上げを進めており、大型衛星の開発・製造技術も保有している。世界のマーケットに進出し、海外への輸出実績もある。

ひるがえって日本はどうか。日本の宇宙機器産業の売上は約2,600億円、米国の1/15で、輸出実績は170億円規模に過ぎない。

これは、これまでの日本の宇宙政策に原因がある。日本の宇宙開発は歴史的に宇宙開発事業団(現JAXA)による「研究目的」中心の施策が進められてきた。宇宙ステーション、科学衛星、H2Aロケットなどで技術は高いが産業力の向上をそもそも指向してこなかった。

政府の宇宙予算も、文部科学省によって大学などでの一過性の研究衛星の開発に大半が費やされてきた。そこに産業化、競争力強化という視点はない。技術体系も研究に偏重しているため、高コスト体質や開発期間の長期化など、産業競争力強化に必要な「低コスト、短納期」といった視点が欠けていたのだ。

2008年にようやく宇宙基本法が制定され、研究中心であった宇宙開発を利用ニーズ主導にという政策目的の転換がなされたが、未だ宇宙産業で世界に遅れを取っている現状は変わらない。今こそ、拡大する世界の宇宙市場を日本の高い技術で獲得していく政策に舵を切るべきだ。

1. 宇宙の利用サイドたる防衛・ビジネスが宇宙開発を主導する体制を作れ!

日本の宇宙開発が「研究中心」に偏ってしまった最大の原因は、宇宙分野の最大のユーザーである「防衛(軍事)」を平和利用原則の名の下、宇宙開発から隔離してきたことによるところが大きい。

100の行動防衛省編」で提言したように、「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」いわゆる「宇宙条約」により、全世界で宇宙の平和利用が定められている。日本以外の諸外国では、この平和利用原則は、「非侵略」と解されている。

一方、日本では、政府答弁において「平和の目的に限り」という文言を、「非侵略」ではなく「非軍事」と解した。その結果、防衛省による衛星等の宇宙施設の利用が原則禁止され、宇宙の最大のユーザーたる防衛分野が宇宙の研究開発を牽引することができず、研究中心の宇宙開発が行われてきてしまった歴史がある。

しかし、宇宙開発は数少ない成長分野の1つである。ユーザーたる防衛分野と民間ビジネスが一体となって宇宙開発を引っ張っていくことが合理的なのは、世界の常識だ。世界各国が宇宙「利用」を軍事、ビジネスともに積極的に進めている現在、日本だけが固有の宇宙の平和利用原則の解釈で軍事を宇宙から切り離すのはナンセンスだ。

政府は一刻も早く宇宙の平和利用原則の解釈を国際スタンダードの解釈に変更し、さらに、JAXAと防衛省技術研究本部が共同研究を行える体制を作って、限られた予算をユーザーオリエンティッドな宇宙開発に集中投資できる体制を作るべきだ。

宇宙基本法が成立して既に5年が経過した。政府が利用サイド重視の宇宙開発を牽引し、その宇宙開発の成果を防衛、ビジネスに最大限活用して日本の競争力を高める体制が早期に確立することを望む。

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