『SPEC』と『トリック』---映像を自由自在に操る「堤マジック」の"表"と"裏"
『SPEC』HPより

連続ドラマから劇場版幕を閉じたヒット作

このほど映画『劇場版SPEC〜結〜爻ノ篇』で完結したTBSの連続ドラマ『SPEC』(2010年10月~12月)は示唆に富む物語だった。西荻弓絵さんが執筆した脚本は幾重にも読み解けたが、サブジェクトは「多数派と少数派の対立」。多数派が人間、少数派は特殊能力を持つ人間(スペックホルダー)たちだ。

最近はウェブを使えば簡単に「YES」「NO」を問える時代になったため、多数決サイトが花盛りだが、逆に現代社会では多数決で解決できない問題が増えるばかり。多数派が正しいとは限らないためだ。

たとえば、小さな沖縄が日本の防衛のためなら犠牲になっても良いという論理は乱暴過ぎるし、大都市圏の電力消費のためなら地方小都市の原発リスクは仕方がないという道理も通らない。海外に目を向けても同じで、少数派を抑圧すれば紛争の火種になる。

『SPEC』でも多数派の人間が少数派のスペックホルダーたちの利用を図ったり、抹殺を狙ったことから、衝突する。逆にスペックホルダーは人間の支配を目論む。双方は折り合えるのか、それとも殺し合うしかないのか? 興ざめになるだろうから、結末の詳細は書かないが、絶巧のエンディングだった。

サブジェクトは骨太なのだが、ギャグも満載だから、巨編なのに最後まで肩を凝らせなかった。連ドラの映画版は通常、オマケ扱いだが、『SPEC』は違った。連ドラから映画の最終作まで続けて見ないと、物語の全体像が見えなかった。ビジネスとしても巧いやり方だ。計3本の映画がつくられたが、すべてヒットし、総興収は100億円を突破する勢いだ。

『トリック』HPより

メーン演出家は堤幸彦氏(58)。日テレ『金田一少年の事件簿』(1995年)やTBS『池袋ウエストゲートパーク』(2000年)などで独特のセンスや映像美を見せつけ、当代屈指の人気を誇る。やはり堤氏による演出作品であるテレビ朝日の連ドラ『トリック』(2000年~)も、このほど映画『トリック劇場版 ラストステージ』で幕を閉じた。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら