特集 13年訪日外国人旅行者1036万人
初めて政府目標を突破[観光立国]

訪日外国人旅行者数が年間1000万人突破を記念して式典が開かれた。左から3人目が太田昭宏国土交通相=成田空港で12月20日(観光庁ホームページより)

昨年1年間に日本を訪れた外国人旅行者数が1036万人と、初めて政府目標の1000万人の大台を突破したことが日本政府観光局の統計で分かった。「観光立国」を掲げて小泉純一郎政権時の03年に「ビジット・ジャパン(VJ)キャンペーン」を開始して以来、「苦節10年」(観光庁幹部)でようやく目標をクリアした。観光は今後ますます成長が期待される伸び代のある産業。2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて「2000万人の高み」を目指し、新たな観光資源の掘り起こしとハード、ソフト両面の整備、アジアを中心にしたグローバル需要の取り込みなど、官民一体となったいっそうの戦略が求められている。

1月17日の首相官邸。今年初めて開かれた政府の観光立国推進閣僚会議で安倍晋三首相は「2020年の東京五輪という大きなチャンスを得た。これを追い風として(20年の訪日外国人旅行者)2000万人を目指していきたい」と発言した。

この日、政府観光局は13年の訪日外国人旅行者数が1036万人で前年に比べて200万人(24%)増加したと発表した。これまで最高だった10年の861万人をも大きく上回り、03年にスタートしたVJキャンペーンで明示した1000万人の政府目標を初めて達成した。円安で日本への旅行に割安感が出たなど追い風が吹いたことも奏功したが、観光庁は「国と地方自治体、業界が一体となった取り組みの成果」と受け止めている。

閣僚会議で安倍首相は政府目標について「この数字で甘んじるわけにはいかない」と強調し、20年の2000万人達成を新たな目標にすることを明言した。さらに外国人旅行客の誘致に向けて政策を総動員するため、昨年6月に作ったアクション・プログラムを今年6月をめどに改定するよう関係閣僚に指示した。政府は副大臣クラスの観光立国推進ワーキングチームや有識者会議を開き、東京五輪の開催決定などの状況変化を受けて、外国に日本の魅力を発信し、外国人が旅行しやすい環境整備などの具体策を検討する。

過去幾度も挫折した目標達成

政府目標を達成したのは年も押し詰まった昨年12月20日だった。その日、太田昭宏国土交通相が成田空港で開かれた記念式典に出向き、くす玉を割って祝った。1000万人目とされたタイ人の50歳代の夫婦には、和紙ランプなどの記念品が贈呈された。

VJキャンペーンのこれまでの経緯を振り返る。

規制緩和による経済構造改革を推進した小泉政権は、新たな成長分野として裾野の広い観光に着目。「観光立国懇談会」を立ち上げ「住んでよし、訪れてよしの国づくり」をキャッチフレーズにVJ事業を始めた。07年に観光立国推進基本法が施行され同基本計画を閣議決定。観光の国際競争力を高めるための振興策に国を挙げて取り組み出した。08年10月に観光庁が発足した。

VJ事業をスタートさせた背景には、国際観光における日本の地位の低さがあった。開始前年の02年時点では、日本を訪れた外国人旅行者数が524万人だったのに対し、海外へ出かけた日本人旅行者数は3倍以上の1652万人と大幅に出超で、その傾向は現在も変わらない。

世界各国の観光客数を見てみると、比較できる最新の12年でも、日本は836万人で世界第33位。アジアに限っても8位で隣の韓国の1114万人に比べて見劣りする。最も外国人観光客が多いのはフランスで8302万人、次いで米国6697万人、中国5773万人、スペイン5770万人、イタリア4636万人などと続く。日本は世界第3位の経済大国でありながら、国際観光面では立ち遅れていることが明らかに分かる。

そこで、小泉政権は10年までに訪日旅行者を1000万人にするという目標を掲げた。しかし道のりは険しかった。04年の614万人から07年の835万人までは順調に伸びた。ところが08年のリーマン・ショックで翌09年には156万人(19%)減の679万人に落ち込んだ。

10年は861万人と盛り返したが、当初の目標には遠く及ばなかった。しかもこの年に中国漁船と海上保安庁巡視船の衝突事故で対中国関係が悪化。数字を押し上げていた中国人の団体旅行などが減少するきっかけになった。11年は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故などの影響で10年より239万人(28%)も下回る622万人にまで激減した。

12年は9月に尖閣諸島国有化で再び日中関係が悪化したが、何とか836万人と復調。13年は夏に原発事故による汚染水問題が起きて「冷や冷やした」(観光庁幹部)という。そこで政府は8月以降に訪日旅行のキャンペーンなどVJ事業を可能な限り前倒しし、経済界などには海外ミーティングの国内開催や各種国際会議の参加者拡大などを要請し「あらゆる手を尽くして」(同)、目標の1000万人の大台を突破したという。

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