国際・外交
特別インタビュー ケヴィン・メア元国務省日本部長
「アメリカは日中激突をこう見ている」 【前編】

取材・文/ 飯塚真紀子

中国の本当の狙いは東シナ海の覇権を握ること

---尖閣諸島の領有権を巡って日中の対立が激しくなっています。そんな中、昨年12月26日に安倍首相が靖国神社を参拝しました。アメリカはこれをどう見ているのでしょうか?

元米国務省日本部長ケヴィン・メア氏

アメリカ大使館は「日本の指導者が近隣諸国との関係を悪化させる行動をとったのには失望した」といいました。ただ、私としては「失望した」という表現は大げさだと思います。

アメリカ政府が懸念しているのは、靖国参拝ではなく、中国の挑発的行動で東アジアの緊張が高められているということです。靖国参拝によって、それまで注目されていた中国の挑発活動ではなく、むしろ日本の方が注目されるようになったことを懸念しているのだと思います。

安全保障の点では、問題になっている国は中国であり、日本ではないのです。日米のメディアは、安倍政権が右傾化、再軍事化しているなどと書き立てていますが、これは事実とはいえません。アメリカ政府も何年か前から、日本も、日米安全保障体制の下でその役割を果たすことができるよう、日本独自の防衛力、抑止力を向上する方が良いと考えていたからです。それは今も変わりありません。

日米同盟がきちんと進化できるように、日本は役割を果たさなくてはならない。だから、アメリカ政府は、安倍政権が、年末に出した防衛大綱と中期防衛力整備計画と国家安全保障戦略を歓迎したのです。

参拝について「失望した」と発表されましたが、何に失望したかというのが問題です。安全保障の関係から見ると、日本や韓国にとっては、中国と北朝鮮が目の前にある脅威なのです。尖閣諸島問題だけではなく、何年か前から、中国は南シナ海でいろいろな威嚇的行動を取り、東シナ海でも尖閣諸島の現状を変更しようとするような行動を取っているからです。アメリカ政府もこれらの行動にははっきりと反対しています。

また、中国の本当の狙いは、尖閣諸島の領有権だけではなく、もっと幅広く、東シナ海の覇権を握ることです。昨年11月末、中国が一方的に防空識別圏を決めました。これは、日米にとっては、緊張を悪化させる挑発的行動です。

アメリカの外交政策には「航海と航空の自由」という基本があります。ところが、中国は一方的に航空識別圏を広げる策を取ったので、アメリカはB52を飛ばしたのです。こういった背景があるから、アメリカ政府は、安倍政権が日本の防衛能力を向上させようとしていることを歓迎したのです。

尖閣諸島については、アメリカ政府は特別な立場は取らないという政策で、領有権がどちらかにあるかをアメリカが決めるわけには行きません。しかし、アメリカ政府は、施政権は日本にあるとはっきり言っています。

日米安保条約の第5条では、アメリカはどういう状況の時に日本を防衛しなくてはならないかが定められているのですが、日本の施政権下にある領域で武力攻撃が起きれば、日米安保の対象になると定められています。尖閣諸島は日本の施政権下にある領域なので、日米安保の対象になるのです。

クリントンも、ヘイグ国防長官も、議会も、中国の一方的な威嚇的行動で尖閣諸島の現状が変更されることには反対しています。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら