カイジ「勝つべくして勝つ!」働き方の話
【第1回】仕事があっても、家があっても、貯金があっても不安なぼくたち


漫画『賭博黙示録 カイジ』とは?

自堕落な日々を過ごす主人公、伊藤開司(いとう・かいじ)。そのカイジが多額の借金を抱えたことをきっかけに「帝愛グループ」をはじめとする黒幕との戦いに挑んでいく大人気漫画。命がけのギャンブルを通じて、勝負師としての才能を発揮するカイジだが、その運命は果たして・・・。

(作者:福本伸行 講談社『週刊ヤングマガジン』で1996年11月号~1999年36号まで連載された作品)


「日本を、取り戻す」

そう公約を掲げた安倍内閣は、「アベノミクス」と呼ばれるさまざまな経済政策を実施してきました。

これで景気が回復するのではないか・・・。2013年は、そんな期待感がほんの一瞬、日本を包んでいたように思います。しかし、2014年の今、生活が良くなったと感じている人はいったいどれくらいいるでしょうか。失業率は高止まりのまま、4月には消費税率が8%に上がります。むしろ、こう気づいた人のほうが多いのではないでしょうか。「やっぱり、国に期待してもダメだ」と。

2013年4月に上梓した『カイジ「命より重い!」お金の話』(サンマーク出版)は、ありがたいことに現在16万部を突破するベストセラーとなっています。大人気マンガ『カイジ』(講談社)をもとに、お金の知識を解説した本ですが、刊行当初に想定していた読者---"カイジ"のようにギャンブルにはまったり、借金地獄に陥って困っている人たちを、はるかに超えた幅広い人々に支持されることとなりました。

刊行直後からずっと、ぼくは"ざわざわ"した気持ちでこの状況を眺めていました。

この本がベストセラーになったということは、これだけ多くの人が「お金の知識」を得なければならないと思っているということです。裏返せば「お金」にそれだけ多くの人が危機感を感じているということです。 

本書の読者は、借金地獄に陥っているとか、明日の生活もままならないとか、そういう人たちばかりではありません。ちゃんと会社に勤めていて、一定の収入があって、家族がいて、ごく普通の生活をしている人たちの方が多いことでしょう。そういう人たちが今、自分の生活に不安を感じている。この本の出版を通して、ぼくはそのことを強く実感することとなりました。

読者から「知っていることが多かった」という感想も寄せられました。たしかに本書は「お金の入門書」として、超基礎的・根本的なマネー・リテラシーを語るにとどめています。

「今、自分が抱えているこの不安を具体的にどう解決すればいいのか」ということを知りたかった読者にとっては、少々物足りない作品だったのかもしれません。だから、刊行後すぐに、ぼくは、ぼくなりに、その問いに答えるにはどうしたらいいかを考えるようになりました。そして、もう一つ語らねばならないテーマがあるように思ったのです。

「お金」と「働き方」は表裏一体

ぼくはいつも、「お金」と「働き方」は切っても切れないものだと考えてきました。それは、経済学の父と言われ、哲学者でもあったアダム・スミスの次のような言葉の影響があります。スミスは、「人間の幸福」を次のように定義しています。

「幸福とは、健康で負債がなく、良心にやましいところがない状態である」

スミスはこの言葉で、人はお金だけでは幸せにはなれないということを暗示しているように思います。つまり、「どのような心身の状態で収入を得るか」も大切なのだと。それはすなわち、幸せであるためには、働き方を考えろ、ということなのだと思うのです。

だから、前著を刊行後、ひと月ほど経ってから、担当編集者に「カイジと"働き方"」で次の本を書けないだろうかと相談してみました。『カイジ』を読んだことがある人ならその理由はお分かりかと思いますが、担当編集者はひどく不思議そうな顔をしてこう言いました。

「あのぅ、カイジは働いてませんけど・・・」

お金の話を本当に語るには「働き方」というテーマが不可欠だということ。そして『カイジ』の中には、ぼくたちが働き方を考えるヒントが詰まっているということ。最終的にはそういうぼくの意図と想いを理解してもらい、続編となる『カイジ「勝つべくして勝つ!」働き方の話』が昨年末に刊行の運びとなりました。

担当編集者が首をかしげたのと同じように「カイジで働き方なんて語れるのか?!」とか「地下の労働施設で働く人のための本か!?」なんて思った読者もいたかもしれません(苦笑)。けれど、おかげさまで発売から2ヵ月余りで10万部を突破する勢いで売れています。

この連載では、本書のエッセンスを、さらに最近の動向に合わせて新しいトピックと一緒にご紹介したいと思っています。

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