ドイツ
同性愛者に寛容なEUと抑圧的なロシア---ドイツ国民の多くは「どっちでもいいかな」
FC Everton時代のヒッツルスペルガー 〔PHOTO〕gettyimages

1月の初め、数ヵ月前に引退した有名なドイツのサッカー選手(31歳)が、ディ・ツァイトというこれまた有名な全国紙のインタビューで、自分が同性愛者であることを告白した。

男の同性愛者は、ドイツではシュヴールと言う。女の同性愛者はレズ。どちらもニュースでも使われている名称だ。一方、ホモと言うのは、元来、同性愛の総称で、男女共通。ところが日本では、女性の同性愛者はレズと呼ぶようだが、男性の同性愛を表す言葉はホモだけ? あるいはゲイ? でも、ゲイはちょっと違う気がする。

ちなみに、シュヴールでなく、シュヴュールとなると湿度が高いという意味の形容詞で、昔、「なんて蒸し暑いのだ!」と言ったつもりで、間違って「なんてホモなのだ!」と叫び、周りの人々をびっくりさせてしまったことがあった。ドイツ語は難しい。

同性愛を告白して英雄扱いを受けるヒッツルスペルガー

さて、話を戻すと、その元サッカー選手はヒッツルスペルガーといって、31歳の若年。FCバイエルンでデビューし、2000年からイギリスのAston Villaに移籍、2004年にはドイツのナショナルチームに加わった。

そのあと、シュトゥットガルトのVfB Stuttgartのキャプテンを務めたり、イタリアのLazio Romに行った後、2011年にはWest Ham United、それからVfL Wolfsburgを経て、引退した時はイギリスのFC Evertonでプレーしていた。私はサッカー音痴なので、これはすべて価値もわからずに、資料を書き写している。

同性愛は、政治家の世界では、とっくの昔に禁句ではなくなっており、前外務大臣も、ベルリンの人気者の市長も、皆さんホモだ。女子サッカーでも、レズは問題にならない。しかし、男子サッカーの世界では、同性愛は今までタブーだった。サッカー選手に求められる男らしいイメージと、ホモのイメージが合わないからのようだ。

ただ、ヒッツルスペルガーは、甘いマスクの男性とはいえ、ナショナルチームのメンバーになるほどだから、文句なしに男らしい。つまり、彼のカミングアウトの何が画期的であったかというと、ドイツ人サッカー選手の花形の一人が、男らしさを誇りながら、自分はホモであると告白したことに尽きる。タブー破りだ。

ただ、そうはいっても、その後の反応は異常とも言うべきものだった。「素晴らしい決断」、「勇気ある行動」、「尊敬に値する」などという華々しい感想が、ドイツのみならず、ヨーロッパ全土の有名芸能人、歌手、スポーツ選手などから続々と寄せられた。

メディアも、夜のゴールデンタイムのニュースの最初の方で取り上げるという優待ぶり。そして、まもなくその熱狂はトークショーに舞台を移した。とにかく、あっちでもこっちでも称賛の嵐。

緑の党の政治家、フォルカー・ベックは自分も同性愛者だが、彼のコメントは、「非常に尊敬する。ヒッツルスペルガーの勇気ある一歩が、やっとタブー克服につながることを希望する」というもの。

クラウディア・ロート(緑の党の女性政治家)も、「やった、ようやく! ヒッツルスペルガーは、扉を大きく開いた。これからは、現役のサッカー選手も(略)、将軍や司教たちも後に続くことを希望する」と、ビックリ仰天するようなコメントで舞い上がった。

その様子を一言で分かり易く言えば、ヒッツルスペルガーはまさに英雄扱いなのである。同性愛者は、異性との性愛を好む人間より、ずっと偉いかのようだ。はっきり言って、大多数の人たちは、大げさに称賛もしないが、それほど偏見もない。「あ、そうだったの」ぐらいの感想しかなかったはずだ。なのに、ジャーナリストがやんやの喝さいを送り、なぜあそこまで英雄視した取り上げ方をするのかがわからない。

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