名護市長選に負けた石破氏の態度はまるでイソップ寓話。なぜ沖縄県民が辺野古移設反対なのかその現実を見よ!

本コーナーは、佐藤優さんが毎月第1金曜日と第3金曜日に出演している文化放送「くにまるジャパン」での発言を紹介します。今回は1月31日放送分をお届けします。野村邦丸(のむら・くにまる)氏は番組パーソナリティ、伊藤佳子(いとう・よしこ)氏は金曜日担当のパートナーです。

邦丸: いつもはここでニュースを取り上げるのですが、今日は佐藤さんが最近いろいろなメディアに寄稿されているものから取り上げたいと思います。テーマは2つです。一つ目は「沖縄」、そして「日本とロシア」。まずは「沖縄」から。(……略)

佐藤: この「くにまるジャパン」の放送内容をメールでも流していますけれど、沖縄の選挙に関しては録音していた人もけっこう多かったということです。「佐藤さんの予測どおりになりましたね」と言われるんです。沖縄ツウと言われる人のほとんどは、ギリギリで末松文信候補がひっくり返すのではないかと予測していた。

東京からそうとう応援もするし、カネも入れて振興策も入れるし。石破茂(自民党幹事長)さんが500億円というおカネを名護につけるという話も直前にした。それから、公明党が最終段階のところにおいては末松さんに行くんじゃないかと。こういうような情報が流れたんですが、私だけが一貫して、そうはならないと言っていた。しかも大差がつくと予想していました。

(…略…)

佐藤: 今回重要なのは、どうも東京からは、沖縄で意見を申し立てている人たちというのは左派、日米安保に反対しているリベラル派じゃないかと見てしまうんですが、そうじゃないんだということなんです。普天間飛行場の辺野古移設に反対しているのは保守派なんです。

(…略)沖縄の保守派が、「東京の言っていることにとにかく従わなければならない」というグループと、「保守というのは土地の利益に合致してなければいけないのでこれはもう過重負担で無理だ」というグループに分かれていて、後段のグループは、これ以上無理なことをすると、「ふざけるなよ、これは差別だ」ということで、逆に「嘉手納基地を封鎖しろ」とか「日米安保自体を棄損しろ」という事態になったら大変だから、もう歩留りをつけておいたほうがいいと考えているんです。

こちらのグループのほうが今、保守派の中心になっているんですね。仲井眞弘多(なかいま・ひろかず)知事の今回の転換(辺野古への移設のための埋め立てを承認)は、ものすごい圧力をかけられて知事が壊れちゃったんだと思うんですよ。それで、もうまったく沖縄で影響力がなくなった。翁長雄志(おなが・たけし)那覇市長に求心力がグッと移っています。この人も保守系で、辺野古移設反対をずっと言い続けている。ですから、沖縄と沖縄以外の日本とのギャップが辺野古の問題で広がっているので、これが今後どうなるか心配です。

邦丸: 政府が今後、この辺野古移設に関しては「粛々と進める」と言っていますね。地元名護市の権限は尊重しながらも、それがすべてではないんだと言っています。「粛々と」というのは「強引に」ということなんですね。

佐藤: 選挙の前までは、「名護市長選挙は絶対に勝たなければならない」と言っていた。それは市長権限があるからということでした。それを獲らないことには、円滑に進まないんだから、これは決戦だと言った。

邦丸: はい、そうでしたね。

佐藤: 石破さんの話を聞いていると、イソップ寓話の「すっぱいブドウ」を思い出すんですよ。

(…略…)

キツネが森のブドウを取ろうとしていた。ところが高い所になっているので取れない。何度頑張っても取れない。どうしても取れなくて、キツネは最後に捨て台詞を吐く。「あのブドウは酸っぱいんだ」と。

(…略…)

佐藤: 選挙の前は「勝つんだ」「勝つんだ」と一生懸命言っていた。つまり、ブドウを取ろう、取ろうとしていた。ところが選挙に勝てなかったら、「市長権限なんか関係ないんだ。国が粛々とやるんだ」と言い出した。そういうイソップ寓話みたいなことをやっていてはダメですよ。

邦丸: 辺野古移設に関しては、以前から佐藤さんは「沖縄人同志、同胞同志が血を流し合うような事態だけはなんとしても避けなければならない」とおっしゃっています。

佐藤: 要するに、東京の保守派の人は、本土から行っているプロの新左翼とか、過激な考えを持った活動家が辺野古移設に反対しているんだというイメージを持っているんですね。しかし、移設反対の中心になっているのは沖縄の地元の人たちなのであって、特に「戦争は二度と繰り返したくない」という80代、90代の沖縄戦経験者の人たちが、基地をつくるとなれば座り込みをすることになるんです。それを沖縄県警の機動隊がゴボウ抜きにする。機動隊員は沖縄出身の青年たちですよ。となると、沖縄出身者の間で流血が起きて、高齢者からは死者が発生することが十分考えられます。そうなった場合、沖縄のなかでは怒りが沸点に達しますよ。

邦丸: ふむ。

佐藤: (略)国際的に見ると、民族問題の初期段階なんですよ。ですから、これは分離の可能性すらある、大変な段階なんです。この問題について、私は自分の立場ははっきりしているんです。沖縄は日本のなかにあったほうが、日本のためでもあるし、沖縄のためでもあると強く思う。だから、中央政府はやり過ぎてはダメですよ。「過ぎたるは及ばざるが如し」とは、こういうことだと思うんですよ。


邦丸: 沖縄県内の世論調査を見ると、なぜ辺野古移設に反対なのかというと、「新たなる基地をつくることになるから」という回答に、ああ、そうかとハッとします。

佐藤: そういうことなんです。実は、沖縄の基地というのは、地元の同意を得てつくられたものは1つもないんです。そこが原発とは違うところなんです。原発は一応、設置するときには地元の同意を得ているわけです。

沖縄の基地は「銃剣とブルドーザー」と言われるように、占領下に無理やりつくられちゃったものなんです。もし、辺野古に新基地ができると、これを地元の人が認めたということになっちゃう。そうすると、沖縄の基地の位置づけも変わるんだということも、沖縄の人たちの危機感をもたらした原因で、この流れはもう変わらないです。

いくらおカネを積まれても変わらない。だから、沖縄はおカネで最終的には転ぶんだという発想から、自民党本部も首相官邸も早く決別するべきですね。

(…略…)

邦丸: 佐藤さん、以前おっしゃっていましたけど、過去の自民党政権のとき、時の総理大臣、時の政府重鎮が何度も沖縄に足を運んだということでした。おカネ、振興策ももちろん持っていくんだけれど、何度も何度も足を運んだ。

佐藤: ぜんぜん提案の内容が違うんですよ。沖合にあんな巨大基地を永遠に置いておくということではなくて、今あるキャンプ・シュワブの滑走路を延ばして、しかも15年の期限付きでその後は民間に渡すというものだったんですよ。それが今は、普天間よりもずっとデカい基地をつくって永久に置いておこうという。話がぜんぜん違うわけです。それも沖縄の不信感の原因なんです。……