企業・経営
円高もトヨタショックも乗り越え過去最高益!トヨタ豊田章男社長が克服した「内なる敵」

トヨタ自動車は2月4日、2014年3月期決算の通期業績見通しを上方修正した。昨年11月時点の予想と比較して売上高は5000億円プラスの25兆5000億円、営業利益は2000億円プラスの2兆4000億円、当期純利益は2300億円プラスの1兆9000億円になる見通しだ。

営業利益は過去最高だった2008年3月期の2兆2703億円を上回る。トヨタが公式に過去最高益の見通しを示すのは今回が初めて。これはかなり堅く見積もった値であり、1ドル=100円程度で推移すれば、実際には2兆円台後半の3兆円が視野に入る程度まで業績は拡大すると見られる。プラス2000億円となる要因は、為替の影響でプラス1400億円、原価改善の努力で400億円、営業の努力で200億円となる。

「北米で大型車を売って稼ぐ」体質から脱却

これまで過去最高だった08年当時と比較しても現在は円高であり、業績見通しを発表したトヨタの佐々木卓夫常務役員は「08年と同じ為替水準であれば、利益はさらにプラス1兆円だった」と説明した。

同時に発表した確定値である第三・四半期決算(2013年4月~同12月)では、売上高は前年同期比17・8%増の19兆1225億円、営業利益は2・3倍の1兆8559億円、当期純利益は2・4倍の1兆5260億円だった。営業利益は絶対額で前年同期比で1兆374億円増えたが、その主な要因は為替の変動(プラス8000億円)、原価改善の努力(プラス2100億円)、営業面での努力(プラス1400億円)で、諸経費の増加(マイナス1800億円)分を吸収した。

筆者はこれまでも本コラムで何回か指摘してきたが、トヨタの大幅増益の要因は、単に円安だけではない。地道ながらも大きな構造改革を実施してきたからである。円安差益が、この構造改革という体質強化の上に大きく効いたからである。

トヨタは2011年に発表した「グローバルビジョン」で、「グローバル販売750万台、1ドル=85円で1兆円の利益が出るようにする」と宣言している。むやみに規模を追わずとも一定の利益を確保できる体質づくりを目指した。佐々木常務役員は「この考え方の延長戦上に今回の利益がある」とも語った。
 

リーマンショック前のトヨタは、利益率の高い大型・高級車を北米で売ることだったが、今回は、世界で万遍なく小型車を売っても利益が出るように固定費を下げて粗利が向上する体質に改めたということだ。

具体的には材料変更、設計変更など細かい努力を積み上げていった。第三・四半期の地域別営業利益を見ると、日本で1兆1614億円、北米で3084億円、欧州で431億円、アジアで3057億円稼いでいる。赤字の地域がなくなったし、米国一辺倒でもなくなった。豊田章男社長は、国内事業も大切にしながらグローバル対応も強化する方針を表明しており、その方向性が現れている。



リーマンショック前のトヨタと今のトヨタでは経営方針が大きく変更され、それが今回の過去最高益につながった。

「トヨタショック」が始まったと呼ばれたのが6年前の2008年11月6日だった。この日、トヨタは2009年3月期決算の通期業績見通しの下方修正を発表した。海外の子会社などの利益を含まない単独決算で輸出の不振などから本業の儲けを示す営業損益が下半期に赤字になった。トヨタが戦後初めて営業赤字に陥ることになったため、ニュースは新聞紙上をにぎわした。ただし、その時点で連結決算では通期で6000億円の営業黒字を確保する見込みだった。

ところが、それから2カ月も経たない12月22日、渡辺捷昭社長(当時)が記者会見して、通期の連結でも1500億円の営業赤字になる見通しを発表した。わずかの間に7500億円もの利益が吹っ飛んだ。販売台数も5月の期初予想の906万台から12月22日時点では754万台にまで落とした。一気に152万台減少したことになる。

一般的に一つの自動車工場で年間に約30万台造ることから考えると、工場4つか5つ分の販売量が消えたことになる。特に「レクサス」や大型ピックアップトラック「タンドラ」など高価格帯の車が売れていたドル箱の北米市場が急速に縮小したことが収益悪化に拍車をかけた。



9月にリーマンショックがあったとはいえ、トヨタの業績悪化の本質的な理由は「内なる敵」に敗れてしまったことにあった。単に「リーマンショックの影響」と一言では片づけられない。

 社内で無防備な収益追求主義が第一となり、儲けは顧客に商品やサービスが評価された後から付いてくるという発想に欠け、安くて良い商品をいかに造るか、あるいは商品づくりの前にいかに人材育成に取り組むかといったトヨタが最も大事にしてきたことが失われ始めていたのである。

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