二宮寿朗「日本に求められる国際人育成」

 渉外活動の「国際人」、求む。
 現在、日本は国際サッカーで影響力を及ぼすことのできるFIFA(国際サッカー連盟)理事の座を得ていない。JFA(日本サッカー協会)の小倉純二名誉会長が2002年から9年にわたってFIFA理事を務めてきた。だが、2011年にAFC(アジアサッカー連盟)選出のFIFA理事選で後継の田嶋幸三JFA副会長が敗れてしまい、日本はポストを失った状態になっている。その前には2022年のワールドカップ招致にも失敗していて、サッカーの国際社会、国際政治において顔の利く人材を育成する必要性が近年、ずっと叫ばれてきた。

宮本恒靖は新たな成功例になるか

 そんななかで注目を集めているのが、元日本代表DFの宮本恒靖氏。昨年9月、JFAの国際委員に就任し、活動を始めている(今年2月にはJリーグの特任理事にも就任)。2011年限りで現役を引退した宮本氏は田嶋副会長の薦めもあって、2012年にFIFA運営の大学院「FIFAマスター」に進み、10カ月にわたってスポーツの歴史、経営、法律を学び、昨年7月に修了した。言うまでもなく、授業はすべて英語である。

 卒業からわずか2カ月後の国際委員就任に、協会の期待の高さが伺える。国際委員は世界との交流、情報収集、さらには海外の団体との交渉などが役割だが、委員長を務める田嶋副会長は「まずは協会の仕事を知ってもらいたい」とのコメントを残している。「まずは」の意味は、手始めに、と解釈できる。ゆくゆくは渉外活動のプロフェッショナルに、という協会の願望や思惑も見えてくる。

「FIFAマスター」の卒業生は、FIFAのみならずIOC(国際オリンピック委員会)などあらゆる方面で活躍しているという。宮本氏は学業の財産のみならず、人脈の広がりも持てたはず。彼は第13期生にあたるが、元プロサッカー選手の挑戦は宮本氏で2人目。その意味でも、非常に価値があったと言える。

 彼自身、今後のプランについては言及していない。欧州で指導者ライセンスも受講中で、監督やコーチの道を選択する可能性もあるだろう。ただ、もし海外との渉外活動や組織経営、運営のほうにシフトしていくなら協会の「幹部候補生」となっていくことは十分に考えられる。

 宮本氏はワールドカップに2度出場し、オーストリアのザルツブルクでもプレーした。ピッチ上の「国際人」がピッチ外でも「国際人」になっていく成功例を提示できれば、日本サッカー界で選手のセカンドキャリアとして新しい道を切り拓くことにもなる。