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第1部 覆面調査で丸わかり 「痒いところに手が届く高級ホーム」と「痛くても放置される悪質ホーム」
老人ホームは「格差社会」食事も介護もまるで別物です

核家族化が進み、「おひとりさま」世帯も増えるなか、「終の棲家」として老人ホームを選ぶ人も多い。ときにマイホームに匹敵する大きな買い物にもなる施設選び。その先に待つのは天国か地獄か。

「全てに満足です」

「取材の方?いいこと、たくさん書いてね」と入居者の女性が明るい声で話しかけてきた。

JR武蔵野線市川大野駅から1㎞弱の、1万9561m2という広大な敷地。ここに鉄筋コンクリート造3棟の、高級マンションのような建物が威容を誇る。居室数352戸、取材時の入居者数429人。国内有数の巨大有料老人ホーム、松戸ニッセイエデンの園だ。

敷地内には、介護付き有料老人ホームであるニッセイエデンの園以外にも、クリニック、在宅介護支援のヘルパーステーション、フィットネスクラブなどがある。フィットネスクラブ内には25mプールにジャグジー、スタジオ、ジムがあり、入居者の利用は無料だ。

本館入り口から入ると吹き抜けの広いロビーラウンジが視界に入る。中央にはグランドピアノが鎮座し、プロのピアニストを招いての音楽会も開かれるという。

落ち着いた内装、毛足のしっかりした絨毯は高級感に満ちている。陽光が降り注ぐ大食堂では、この日の昼食時、麺と肉、2種類の定食が準備されていた。ためしにそのうちのひとつ、鶏肉の香草焼きを注文してみる。味付けは薄めながらも、いわゆる老人食の味気なさはなく、盛り付けも美しい。ご飯、味噌汁、主菜、漬物、デザートで、入居者には630円の価格設定だ。総園長の彦坂浩史氏はこう話す。

「食堂は予約制で配膳はセルフサービスです。入居者の方にはお手間ですが、これらは意図的なもので、たとえば、予約があったのに来ない方には、『どうなさいました』と確認をします。

入居者の方々は、なるべく最後まで自分自身で生活を管理したいと考えている。なかには施設のサービスを一切利用しない方もいます。それでもなるべくコミュニケーションの機会を作り、生活支援を充実させるよう努めているのです。同価格帯ではホテルのように至れりつくせりのサービスを提供するところもありますが、ここではこうしたコミュニケーションに基づく生活支援を大切にしています」

別棟にある付設のクリニックは、19床の有床診療所だ。入居者の日常の健康管理や診察から急病時の治療まで対応している。24時間365日、夜間にも医師と看護師が常駐し、入居者が体調を崩しても安心だ。前出の彦坂総園長は言う。