社外取締役設置を「事実上の義務化」。法務相答弁で守旧派企業も遂に逃げ道がなくなった!
磯山 友幸 プロフィール

社外取締役の設置促進などを目的とする会社法改正案が今国会で審議され、可決される見通しだ。欧米では当たり前になっている社外取締役を置くことで、日本の上場企業に紀律を働かせようというコーポレート・ガバナンス(企業統治)の強化は、海外からもとくに注目されている。

安倍晋三首相が進める「アベノミクス」の成長戦略にも「会社法を改正し、外部の視点から、社内のしがらみや利害関係に縛られず監督できる社外取締役の導入を促進する」と盛り込まれている。

どうやって企業に導入を促すか。大きな焦点になっていたが、どうやら流れは決まったようだ。

「義務化断念」「先送り」の報道は実態と異なる

実は、国会に提出された法案では、社外取締役設置は明確には「義務化」されていない。会社法の改正議論が始まったのは民主党政権下の2010年。法務省の法制審議会会社法制部会で議論された。

2011年にまとまった「中間試案」では、上場企業に社外取締役を「1人以上の義務付け」ることが盛り込まれていたが、経団連や全国銀行協会などが強硬に反対。最終的に2012年8月にまとまった要綱案からは外され、義務化しないことになっていた。その後、民主党政権の崩壊で、法案は宙に浮いていた。

政権を奪還した自民党安倍政権はその扱いに苦慮する。成長戦略では導入促進と言いながら、準備されている法案は義務付け見送りというチグハグな内容になっていたからだ。自民党内の議論では、法案を大幅修正して、社外取締役を義務化するという案も出たが、これには法務省が真っ向から抵抗した。

「もし強引に社外取締役の義務化を打ち出せば、経団連が態度を硬化させ、法案自体が出せなくなる」

法務省はこう主張していた。だが、法制審議会で決めた結論をひっくり返されては省としてのメンツにかかわるというのが本音ではないか、と見られていた。だからと言って、安倍内閣が「義務付け断念」のまま、法案を国会に出すわけには行かない。自民党と法務省の間で、ギリギリの調整が行われた。

答申では、社外取締役を置いていない場合、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を事業報告書に記載するよう求めていた。法務省はこれを省令で規定する意向だったが、自民党側は法律の中に明記させたうえで、さらに株主総会で説明するように修正を加えた。

ちなみに、「相当でない」とは、「置くことができない」事情では許されず、「置かない方が良い」理由ということになる。しかも、各社ごとの独自の判断を書かなければならず、経団連などが「ひな形」を用意することもできないようにした。事実上、逃げ道が塞がれているのである。

1月31日、衆議院予算委員会で質問に立った塩崎恭久・自民党政調会長代理は、この法律案は社外取締役を「事実上義務化をしたのに等しい」と言えるのではないかと聞いた。マスメディアでは「義務化を断念」「義務化を先送り」と報じられているが、実態は違うのだと法務大臣に明言するように求めたのである。

この誘い水に谷垣禎一法務相は乗った。「事実上の義務化という塩崎議員のそういう評価、十分可能だと思っています」と述べたのである。正面からは義務付ける法律にはなっていないものの、「置くことが相当でない理由」を説明するのは容易いことではないから、事実上の義務化だというわけだ。

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