家入一真『広報担当』新田哲史が中から見た「選挙イノベーションへの道」【第2回】元総理との討論、そして渋谷での街頭演説デビューで自信を付けた「元ひきこもり」
ツイキャスの使い方を細川氏に教える家入

東京都知事選において、インターネットを使って民意を集めて公約を作るという前代未聞の選挙戦を展開した家入一真。選挙戦初日の演説もiPhoneを手にして動画中継演説をする徹底ぶりをみせたが、ネットだけの選挙活動に限界があることは近年の選挙で示されてきた。

選挙戦前には「元ひきこもりなので外には出たくない」と語っていた家入はどうするのか。広報担当の参謀として家入氏を支援している新田哲史氏によるレポート第2回は、リアルでの活動に歩みだした、候補者としての活動を伝える。

ネット選挙活動においても「O2O」が重要

「確認ですが、家入さんはきょう時点では街頭活動のご予定はないんですよね?」

選挙戦前半、日経新聞の記者から一時期、連日こんな問い合わせが入ったことがあった。今回の都知事選はネット選挙解禁後では初めて。選挙情勢や政策論議などの"本流"の切り口とは別に、「各候補者がどのようなネット選挙活動を行っているか」という視点からの取材が相次いでいる。

告示日の第一声を、渋谷のカフェからツイキャスで発するという我が陣営のスタイルは、メディア側としては一番わかりやすい。ただ、ストレートニュースではないルポ取材とあって掲載日が当初聞いていたよりも遅れる。取材時点でリアルの街頭演説はやる予定はないと回答していたので、その後の状況に変化が無いのか日経の記者は確認に追われていたのだ。

家入は当初、可能な限り、室内ですべての選挙活動を済ませられないか考えていたようだ。告示前日の1月22日の出馬表明会見でも、「24時間ネットで生放送し続けようか」と発言してしまい、同行していた筆者は、事後の囲み取材で「今後の活動の中でリアルに展開していくか考えていきたい」と慌てて軌道修正した。

ポスターにも記載した肩書の一つが「元ひきこもり」。中学2年生の頃からいじめられたのをきっかけに対人恐怖症となり、外に出られず、高校も中退した。同情を誘うためのネタではないし、心の"古傷"が時折うずくのかもしれない。ターミナル駅前などの街頭で大勢の有権者に向かって訴えるようなことなど想像もつかなかったのだろう。

しかし選挙への出馬は「公人」となる覚悟を示す儀式である。生年月日はもちろん、住所、家族構成は事実上マスコミに知られるし、国会議員の場合は資産報告という形で定期預金の額までさらけ出すことになる。

またネット主体の選挙活動で当選することは簡単ではないことも過去の選挙で立証されている。その典型が、昨夏の参院選で自民党から比例代表で立候補した音楽ユニット「東京プリン」の伊藤洋介氏。中盤までネット発信に特化し、浜崎あゆみ氏ら友人の著名芸能人からネット上で応援も受けたが、約3万7千票の獲得にとどまり落選した。

一方、同じ参院選で緑の党から立候補した三宅洋平氏は、ツイッター等での積極的な有権者との交流と、渋谷駅前を占拠して話題になった「選挙フェス」等のリアルでの活動を融合させ、17万を超える票を獲得。選挙制度のために結果こそ落選したが、大政党の候補者であれば余裕で当選できる得票数だった。

企業のマーケティングで、消費者にネット上(オンライン)で接した情報からリアル(オフライン)での購買につなげる施策を「O2O(Online to Offline)」というが、ネット選挙活動においても、有権者が、ホームページやツイッター等で触れた候補者の街頭活動に足を運び、最終的には投票することにつなげる「O2O」が重要なことを示している。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら