行政・自治体
橋下市長の辞職・出直し選を機にあらためて問う。「大阪都構想」の何が問題か?

橋下徹大阪市長(日本維新の会共同代表)は1日、市長を辞職して出直し選に立候補する意向を表明した。

政治的なことをいえば、大阪市議会で、大阪維新を除く、自民、公明、民主、共産が大阪都構想の区割り案に反対・慎重で、事実上、住民投票プロセスができなくなったので、その政治的な打開のために、大阪市長選挙に打って出たわけだ。

市長選挙なので、市議会会派の構成が変わるわけでなく、橋下氏が再び大阪市長になっても、住民投票ができるとは限らない。ただし、小泉純一郎氏の2005年郵政解散でも、参院で否決されたのに衆院を解散し、民意を問う形で、選挙結果によって参院の賛否をひっくり返したことがある。政治的には、どのような結果になるのか興味深い。

筆者は、一週間前の先月27日(月)、第3回大阪府知事・大阪市長による府市再編に関する有識者ヒアリングに有識者として出席した。そのときの、橋下市長のやる気をみて、もし住民投票前で止まるなら、死んでも死にきれないのではないかと感じた。はたして、橋下市長の信念が、大阪市民にどう響くのだろうか。

特別区のメリットを理解していない反対論者

そうした政治的な動きとは別に、都構想がどういう政策なのかを冷静に見ておくことが重要だ。

筆者は、有識者ヒアリングでは、東京都の経験を踏まえ、特別区の意義を説明したが、都構想に反対として高寄昇三・甲南大学名誉教授も意見陳述した。会議資料や録画映像は、大阪市のホームページにある。

筆者は、大阪では市営地下鉄だが、東京では都営地下鉄、大阪では市水道局だが、東京では都水道局、大阪では市立高校だが、東京は都立高校など、身近なもので大阪と東京に違いがあることなどを説明し、東京の特別区は、都と役割分担をして、うまく運営されていると言った。

NHKのニュースでは、筆者の意見は全く報道されず、都構想に否定的な立場の甲南大学の高寄昇三名誉教授の意見だけが出ていた。「大阪市を特別区に再編すれば、防災などの政策を進める上で複数の区長の合意が必要になり、都知事と意見が対立すれば、府市統合で目指す行政の一元化はかえって後退する」という問題点だ。

しかし、これは意味がない。筆者は、東京都における都知事と区長の役割分担を説明した。橋下大阪市長も、役割分担すれば意見対立はないといっていたが、そのとおりだ。役割分担こそが、基礎的自治体と広域自治体をうまく運営するポイントである。高寄氏の指摘は、今の大阪府と大阪市のように二重行政をやっているところによく当てはまる問題だ。

高寄氏の意見では、特別区の権限は市より劣り、財源も今より減るといっていたが、これは事実誤認だ。

大阪の人の感覚として、大阪都構想で大阪市を複数の「区」に変えるというときには、行政区を連想するようだ。ただし、ここの区は、特別区だ。行政区と特別区は天と地ほどの差がある。なにしろ、特別区は、市に代わる基礎的自治体なのだ。たとえれば、行政区は市を会社とすれば支店であるが、特別区は会社そのものである。

しかも、特別区は、普通の市や中核市(人口30万以上)より権限があり、制度の仕組み方によってはほぼ政令指定都市(人口50万以上)と遜色なくできる。また、財源問題も今より悪くならない。

また、高寄氏は、「特別区ではなく市にすればいい」と言っていたが、この発言は、特別区を行政区と同様に市より格下とみている証拠である。仮に、特別区ではなく、市にすると、それぞれが交付税を国から受けることとなって、大阪市はより分割されてしまう。しかし、特別区であれば、区の間の財政調整制度があるので、より一体になれる。

今の大阪市の区は行政区であり、区長は市職員の派遣で、公選ではない。市の人事異動の一環で行われるので、大阪市の区長の名前を区民は知らない。しかも、区議会もなく、区議会議員もいない。ところが、東京の区は特別区であり、区長は公選で、区議会議員も選挙で選ばれる。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら