開幕目前 そこには「魔物」が棲むという 浅田真央、髙橋大輔、高梨沙羅たちへ12人の先輩アスリートからのエール オリンピック「努力で運を摑め」【前編】
〔PHOTO〕gettyimages

五輪特有の雰囲気に呑み込まれる者もいれば、それをうまく利用する者もいる。その違いとは何なのか。先輩アスリートたちが、自らの体験を踏まえて伝える五輪の戦い方、そして後輩たちへのエール。

演技直前、全ての音が消えた

「長野五輪での演技の記憶はほとんどありません。転んだのも覚えていないくらい。演技が終わった後、『五輪に魔物が棲む』と言われるのは、こういうことなのかと……」

血の滲むような努力を重ね、自信を持って臨んだ五輪の晴れ舞台のはずが、身体が思うように動かない。そして、信じられないようなミスを犯してしまう。

長野、ソルトレークシティ五輪に2大会連続で出場した男子フィギュアスケート元代表の本田武史(32歳)は、自身の体験をこう振り返った。

強い者が必ずしも勝つわけではない舞台—それがオリンピックである。

しかし、その一方で実力以上の記録を出してスターダムにのし上がる者もいる。

勝負の分かれ目は、その魔物といかに向き合い、克服するかにかかっている。本田はソルトレークで再び魔物と対峙したという。

「しっかりと対策を練って臨んだソルトレークでしたが、フリーで4回転ジャンプを失敗。練習ではほとんど失敗したことがなかったのに……。五輪とは予想もしないことが起こり得る場だと、あらためて思い知らされました」

しかし、ショートプログラムで本田は不思議な体験をした。