企業・経営
年間販売計画初の1000万台超え!トヨタの業績を急回復させた二つの構造改革とは
トヨタ自動車の豊田章男社長[PHOTO]Bloomberg via Getty Images

トヨタ自動車が先日発表した2014年1月~12月暦年でのグローバル販売計画(子会社のダイハツ工業と日野自動車分を含む)は、前年比4%プラスの1032万台であり、トヨタが1000万台超えのグローバル販売計画を公表するのは初めてだ。

市場規模が世界1位の中国で20%以上プラスの110万台以上、2位の米国で3%プラスの230万台を計画している。市場が拡大しているブラジルやロシア、インドネシアではほぼ前年並みをキープする見通し。ただ、国内は5%マイナスの218万台に落ちる計画だ。

トヨタの販売計画を見る限り、リーマンショックや米国でのリコール騒動、東日本大震災やタイの大洪水、中国での反日デモといった08年以降に襲いかかってきた苦難を乗り越え、回復軌道に乗っていると言えるだろう。

決算も完全に回復している。2014年3月期連結決算でも、本業での儲けを示す営業利益は、2008年3月期の過去最高益(2兆4372億円)を更新するのは確実な情勢で、円安の追い風もあり、3兆円近い営業利益を計上する可能性もある。

トヨタは昨年11月に発表した通期での業績見通しでは、営業利益が66.6%増の2兆2000億円となっているが、実はこれはかなり堅い見通しなのである。

設備投資と製造コストを激減させた「断トツライン」

今回のトヨタの業績回復の大きな特徴は、販売台数の伸びは一桁台でも、利益の伸び率が堅く見積もっている段階ですでに60%を超えている点にある。この構造を分析しない限り「トヨタ復活」の本質的な原因は見えてこない。

確定値である2014年3月期中間決算(同年4月~9月)の営業利益の内訳を見ると、地域別では「日本」が過去最高となる前年同期比3.3倍の8300億円を稼いだ点が注目される。増益分のかなりの分を国内で稼ぎ出していることになる。4年前までは「日本」は営業赤字だったのに、急激に盛り返した。

その理由は、トヨタの「お家芸」である原価改善努力をこつこつと積み上げたことや、生産が増えなくても利益を出せる体質を構築してきたからだ。トヨタの自助努力による成果である。原価改善などこつこつと努力を積み上げていく改革は、トヨタ的経営が本来持つ強みであり、トヨタのDNAと言っても過言ではない。

円安も貢献しているが、こうした構造改革をしたことによって円安効果が上乗せとなって大きく効いていると見るべきであろう。構造改革をしていなければ、円安メリットは「穴」から漏れていくものである。

そのトヨタの構造改革については、収益を押し上げた大きな改革が二つある。

一つは「断トツライン」と呼ばれる、生産性を極めて高めた現場づくりだ。昨年秋にトヨタの主力工場の一つ、高岡工場に導入された。「断トツライン」の源流は、国内最新工場である子会社のトヨタ東日本の大衡工場(宮城県大衡村)にある。筆者も昨年6月に取材に出向いた。あらゆる点に知恵を注ぎ込んだ工場だ。

たとえば、車体をハンガーで吊るして流す方式を止めて、レールの上を流れる「自立式」に変えたことで、屋根を低く、かつ建屋の強度を落とすことができて投資コストを5割カットした。また、需給や車種の変動に応じて生産ラインの長さを瞬時に短くできるラインにしたことで、製造コストも激減。1ドル=80円台半ばでも、国内で生産して輸出しても利益が出る体制を築いた。

しかも、これまでは一つの工場で最低年産20万台ないと利益が出にくかった体質を、「断トツライン」の導入によって年産10万台でも利益が出るように改めた。

この生産量が落ちても利益が出る体質づくりは海外でも進んでいる。トヨタタイのバンポー工場で製造したピックアップトラックやSUVは世界約100カ国に輸出されている。バンポー工場では、固定費という考え方はなく、すべての仕事にかかるコストを変動費として計算して、事業環境の変化に強い工場運営にしている。

この結果、稼働率が40%にまで低下しても利益ができる体質に生まれ変わった。非常に生産性が高い工場でもあり、何秒で1台を生産できるかを示すタクトタイムはバンポーでは56秒。国内のトヨタの工場よりも速い時がある。工場内も徹底的に整理整頓が行き届き、トヨタ生産方式(TPS)の思想を徹底的に採り入れた工場運営をしている。

こうした取り組みなどによって、トヨタはリーマンショック後、総額1兆5000億円の原価低減効果を生み出し、同じく総額で1兆2000億円あった円高による為替差損を穴埋めした。リーマンショックの前に過剰設備になって、需要の変動が起きると一気に赤字に転落したことを反省しての取り組みとも言えるだろう。

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