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面接官「あなたをモノにたとえたら?」学生「はい。消しゴムです」お互いが真剣に迷走中!「人物本位」の就活、こんなにヒドいことになっていた
週刊現代 プロフィール

わが社では、以前は学歴を重視した採用を行っていました。しかし、勉強はできても仕事のできない社員が非常に多かった。そこで次に、学歴にとらわれず、その人の能力、人間力をきちんと見抜くために面接に力を入れるようになりました。

しかし、面接で『あなたの弱点は?』と聞くと、10人のうち8人は『寝食を忘れるほど、ひとつのことに集中してしまうことです』といった答えをします。これは、大学や就活塾で教え込まれた、マニュアル通りの回答。『集中』や『没頭』といった言葉を使って、『それは弱点だけど強みでもありますね』と面接官が言ってくれることを想定した答えなのです」

これでは学生の本当の力をはかることはできない。

そこで今度は、自分の頭できちんと物事を考えられる学生を採ろうと、「フェルミ推定」という採用方法を取り入れる企業が増えた。

「たとえば『シカゴにピアノの調律師は何人いるか』といった、調べるのが現実的に難しい量の推定を、論理的かつ短い時間で行わせる質問を出すのです。しかし、しょせんは机上の空論、屁理屈をこねる力しか試せないうえに、学生が模範解答以外の答えを出したとき、面接官がそれをどう評価すればいいかがわからない。これも、うまくいきませんでした」

このようなさまざまな試行錯誤を経て今、多くの企業がようやく辿り着いたのが「人物本位」という採用基準だ。

仕事とは、突き詰めれば人間と人間の信頼関係の上に成り立つ。マニュアル本では対策できない「人間力」を試すことは、一見意味があるように思える。しかしその結果、面接の現場では、かつてないほどの珍事件が頻発しているというのだ。

ある老舗文房具メーカーの面接を受けた女子大生が語る。

「集団面接でのことです。『自己PR』や『会社に入ってやりたいこと』といった本質的な質問はまったくされず、席に着くなり、『あなたをモノにたとえるとなんですか』と聞かれたのです。

質問の意図がわからず、頭が真っ白になり、私は思わず押し黙ってしまいました……。すると面接官はため息をついて『じゃあ、次の人』と。すると隣の女子学生が、『私は消しゴムのような人間です。といいますのも、まわりの人々が悲しみや悩みを抱えているとき、私と話すことで心の汚れが消えるというのです。かかわる人みんなの気持ちを真っ白な紙のようにリフレッシュさせることができる、まさに消しゴム女なのです!』と、妙にドヤ顔で答えたのです。面接官は面接官で、それを満足げに微笑んで聞いている。

何も答えられなかった私は、当然不合格でした。腹立たしいと同時に、とてもむなしかったです。私はきちんと企業研究をして、真剣にその会社に入りたいと思っていたのに、大喜利みたいな質問だけで選別される。学生も企業も、大真面目な顔して何やってんだって思いました」