雑誌
任天堂(米国で惨敗)「売れないWiiUで大赤字(350億円)」から何を学べるか
フライデー
岩田社長(中)。岩田氏は'00年に山内前社長に請われて入社。'02年から社長を務める〔PHOTO〕gettyimages

「『Wii U』はまったくダメですね。さっぱり売れていません。年末年始はソフトと本体のセットが少しだけ売れましたが、一時的なものだったみたいです」(都内の大手家電量販店売り場担当者)

ゲームメーカーの名門・任天堂が窮地に追い込まれている。1月17日、同社の岩田聡社長(54)は、29日の決算発表を前に、業績予想を大きく下方修正すると発表した。

昨年4月時点では、'14年3月期の通年での営業損益を1000億円黒字と見込んでいたが、今回の発表では350億円の赤字に修正した。これで3期連続の赤字だ(グラフ参照)。昨年、一昨年は円高という言い訳がたったが、円安になった今年、岩田社長の進退も危うい。

「今後、早期にビジネスの勢いを回復させるのが何よりの責務です」

と、滑舌よく続投を表明した社長。かつて「天才プログラマー」として活躍し、「社長になっても心はゲーマー」と言うが、最近のゲームの潮流を読むのには四苦八苦している。株価終値は17日から1200円ほど下げ、21日には1万3415円となった。ネットの株式掲示板には、

〈岩田が社長にいる間は―〉

といった書き込みが見られた。ITジャーナリストの新清士氏が言う。

「下方修正の原因は、据え置き機Wii U('12年末発売)の世界的な不振です。当初、今期で900万台という販売目標を立てていましたが、今回の修正で280万台まで見込みを減らした。前作の『Wii』は、従来のゲームより性能を抑えてシンプルにする戦略で家族という市場を開拓しましたが、今回は失敗です」

Wii Uの不振には二つ理由がある。

一つは、同機の「画面をコントローラーとテレビの二つに分ける」という機能に、ユーザーが必然性を感じなかったということだ。ゲームアナリスト・平林久和氏が言う。

「『画面を二つに分けて何ができるんだ』という反応も多かった。これまで任天堂は『ニンテンドーDS』の『タッチする』機能や、Wiiの『コントローラーを振る』機能が受けてきましたが、Wii Uの機能では今のところ新しい遊び方が確立されていません」

もう一つの理由は、魅力的なソフトがそろっていないということ。前出・量販店の担当者が言う。

「子供連れのお客様がやってくると一応、Wii Uを見るんですが、すぐにお子さんのほうが、人気のシリーズを多数展開する『ニンテンドー3DS』の売り場のほうに走って行ってしまいます。みんな『友達が3DS持ってるから』と言うんです」

ソフトが集まらないのは、任天堂の会社としての方針が影響している。

「任天堂は今回、『画面つきコントローラーに対応したソフトを開発してほしい』という条件をソフトメーカーに出しています。メーカーにとってはコストが余計にかかりますし、『Wii Uで出しても売れないし元が取れない』と開発に二の足を踏んでいます」(前出・新氏)

生前、任天堂を世界的メーカーに押し上げ、昨年9月逝去した前社長・山内溥氏にはこのような口グセがあった。

「ユーザーはおもしろいソフトを楽しむために、しかたなくハードを買うのだから、ゲームの命綱はソフトにこそある」

今この言葉を実践しているのは、むしろライバルのソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)だ。同社が昨年秋に欧米でリリースし、2ヵ月で420万台を売り上げたPS4は、中小のメーカーが同機向けソフトを開発する場合、SCEが協力することを戦略としている。

過去の蓄えを食い潰す

海外で事態はより深刻だ。任天堂の戦略ミスも目立つ。ITジャーナリストの西田宗千佳氏が言う。

「Wiiが好調の北米でしたが、Wii Uでは苦戦。同機はすでにヒットしているPS3やXbox360(マイクロソフト)と性能、価格が大して違わないので、ユーザーがあえて買う理由がないんです」

欧米で人気の最新機Xbox OneやPS4はグラフィック性能に見合ったソフトがそれほど出ていない状態でヒットを飛ばしている。この先、最新ソフトが揃ったら、任天堂が追いつくのは簡単ではない。また、日本で好調の3DSも欧米市場では歯が立たない。

「そもそも欧米では携帯型ゲーム機があまり受け入れられていない。しかも、スマホやタブレット向けゲームといった新興のライバルにただでさえ小さな市場を奪われています」(前出・平林氏)

同社には5000億円近い手元資金があるとはいえ、このまま赤字が続けばジリ貧は目に見えている。'14年度は開発費を約150億円上乗せし、約680億円とした。起死回生のヒットを生めるか。

「フライデー」2014年2月7日号より

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら