HONZ現代ビジネス
2014年02月01日(土)

『零戦 搭乗員たちが見つめた太平洋戦争』 群青色の青春

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レビュアー:鰐部 祥平

日本人の心に強く刻み込まれた戦闘機が存在する。純国産であり、開発された当時において、世界最高の能力を有した大空の王者。しかし、その強さにもかかわらず、大戦末期の劣勢覆うべくもない戦況で、多くの若者を乗せ、帰る事のない死の攻撃に赴かせるという悲しくも皮肉に満ちた運命を背負い込むことになった戦闘機。その華々しい戦果と悲劇性により、開発から70年以上がたった今でも、私たちの心の奥に何かしら大きなものを感じさせる戦闘機、その名は零式艦上戦闘機。

本書はNHKのディレクターである大島隆之がドキュメンタリー番組のため6年の歳月をかけ、零戦の搭乗員にインタビューをかさね、NHK-BSプレミアムで『零戦~搭乗員たちがみつめた太平洋戦争』として放送された番組で伝えきれなかった思いを「NPO法人零戦の会」の神立尚紀と供述して書籍にしたものである。

海軍の主力戦闘機として、日中戦争で華々しいデビューを果たし、太平洋戦争初戦では欧米の植民地であったアジア各地の空を席巻。その航続距離は2200kmに及び、20mm機関砲2門、7.7mm機銃を2丁装備、巡航時間6時間以上、最高速度は500km以上、これは間違いなく当時の最高水準だ。

零式艦上戦闘機(Wikipediaより)

さらにこの戦闘機の特徴は実に美しいその姿だ。三上一禧さん(当時二飛曹)は初めて零戦を見たとき、「一目見たとき、すごい美人の前に出たときに萎縮してしまうような、そんな感じをうけました。これはすごい、美しいと。一目惚れですね」と語っている。男たちを虜にする、優美でどこか女性的な魅力を秘めた戦闘機だ。

しかし弱点もある。防弾板、防弾ガラス、自動消火装置などが存在せず、防御力は低かった。これは、攻撃は最大の防御とする戦闘思想が零戦に存在したためであり、人命を軽視したためではないと著者たちは語る。実際、この点は戦時中に一部改善されている。

ただし、エンジン出力が小さな零戦に重い防弾板を装備すると運動性が鈍るため、搭乗者自身によって外される場合が多かったようだ。また、航空電話もつながりが悪いため、少しでも機体を軽くしたいパイロットたちにより外されるケースが相次いだ。さらに時速480kmを超えて旋回運動する際、舵が重くなり運動性が低下した。

また、機体の強度不足により急降下時の限界速度が米軍機より低く、629kmほど、後期型の五二型いこうで740kmほどである。この弱点は太平洋戦争が中期以降、明らかに不利に働くようになる。

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