西武HD対サーベラス〝大ゲンカ〟から一転〝雪解け〟は本当か。マスコミが振り撒く安易な「再上場シナリオ」に異論あり

西武ホールディングス(HD)が1月15日、東京証券取引所に再上場を申請したというニュースは、年内最大級の大型上場ということもあって、証券業界や投資家に歓迎されている。

ただ、昨年、大株主の米投資ファンド「サーベラス」と西武HDの経営陣が繰り広げた〝大ゲンカ〟を思えば、後藤高志・西武HD社長とサーベラスのスティーブン・ファインバーグSEOが電話会談し、「早期上場で合意した」と、両者が〝雪解け〟したかのような報道は、にわかには信じ難い。

不信感を払拭したトップ電話会談の中身

両者の争いは、「会社は誰のものか」という根源的なところから発していた。

西武HDが、企業価値を向上させる努力を怠っているとして、サーベラスが2012年10月12日、西武HDに送りつけた「要求文書」は強烈だった。47項目の要求のなかに、西武鉄道の不採算5路線の廃止や西武ライオンズ売却が含まれていた。

路線の沿線に住む住民や西武ライオンズファンといったステークホルダーを無視した要求もさることながら、西武HD経営陣を憤慨させ、一丸とさせたのは、経営陣に善管注意義務に反するようなことがあれば、「不当な行為」と見なし、「いかなる法的措置も辞さない」といった調子の高圧的な文書が、交渉の過程で何度も送られてきたことだった。

マスコミに対してもそうで、私自身、「西武HD対サーベラス」の攻防を書く課程において、出版社経由で、抗議というより恫喝に近い文書を送られ、鼻白んだことがある。

サーベラスにしてみれば、「会社は株主のもの」という論理を貫き、争いは法律事務所に委ね、「M&Aは知略を尽くすもの」というファンド資本主義を実践しただけだ。だが、「会社は株主のものであると同時に、地域社会のものでもあり、従業員のものでもある」という意識が強い日本の資本市場に、サーベラス流は受け入れられなかった。

結局、敵対的TOBを仕掛け、経営権の取得を狙ったものの、応募株式は約1000万株で、32.42%だった持ち株比率が35.48%に上がったに過ぎなかった。「西武HDにガバナンス(統治)を定着させるため」として、五味広文・元金融庁長官ら8名の取締役候補を提案していたが、これも拒否された。

今年に入って西武HDとサーベラスが〝雪解け〟したのは、昨年の反省に立って、後藤社長とファインバーグ氏が電話で率直に意見交換したからだという。

「トップ双方に不信感があったのは、サーベラスと西武HDの間に、話をややこしくする弁護士事務所や、事態をよく呑み込めていないサーベラス・ジャパンといった存在があり、ギクシャクしていたから。互いに、上場で〝益〟を出そうという意識は同じなんだから、『話せばわかる』という世界だった」(証券関係者)

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