2011.05.21(Sat) 酒井仙吉

漁業では補いきれず、畜産まで米国頼り
食料安保から見る「ニッポン農政」の大欠陥

酒井仙吉・東京大学名誉教授が警鐘

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〔PHOTO〕gettyimages

 環太平洋経済連携協定(TPP)への参加は日本の農業にとって大打撃を与えることになるだろうといわれている。現在は3月11日に発生した巨大地震の影響で議論は一時中断しているが、いずれその最終的な是非が飽食世代に課せられることになる。しかし、TPP参加の是非にかかわらず、農業の活性化はすでに重要な課題となっており、子や孫の代の食料を心配しなければならない状況だ。そのためここで考えておくべき事柄を示そう。

 戦後、農地面積は増加の一途をたどり1961年に609万ha(ヘクタール)となった。ところが高度成長に伴って地価が高騰すると状況は一変し、100万haが宅地や商工業用にされて生産性の高い農地が失われた。さらに放棄農地が加わって現在の461万haとなる。この半世紀で日本は農業を軽んじ農地を大切にしなくなった。

 2010年農林業センサスによると、日本の就農人口は260万人、その平均年齢は65.8歳、60歳以上が74%、最多層が70~74歳だ。これからの10年で200万人近い撤退者が予想されるが、大半には後継者がなく、農村には引き受け手もない(40歳以下の就農人口はわずか18万人)。これはまったく前代未聞の事態で、放棄農地が虫食い状態で大量に出現し、食料生産を悪化させることになる。これを放置すれば日本は海外の事情に大きく左右されることになり、食料安保などは夢となるだろう。

 それでなくても食料自給率は60年代以降低下の一途をたどっており、1960年には79%だった自給率は1998年に40%になる(日本人の食料の実に6割は海外での生産に頼っている計算だ)。

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