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殺してしまうほどの「執着心」、いまも消えない「相手への思い」 ストーカーたちの午後 実行犯が語る、そのメンタリティ

こんなに好きなのになぜ振り向いてくれないのか。その思いはやがて憎しみに変わり、なにかが自分のなかで壊れたとき、悲劇は起こる。ストーカー行為の加害者たちが抱える心の闇に迫った。

「ボクだけが知っている」

「彼女はボクがいないとダメなんですよ。彼女以上に、ボクは彼女のことをよく理解している。彼女にはボクしかいない。ボクじゃなきゃ、彼女はダメになる」

度の強いメガネの奥で神経質そうな目を光らせ、そう語るのは佐藤信二氏(仮名・32歳)だ。

佐藤氏は、いわゆる「ストーカー」である。彼は元交際相手の美香さん(仮名・27歳)に対し、別れた後も付きまといなどを繰り返してきた。だが、彼に反省の色はなく、罪悪感もない。それどころか佐藤氏は、「自分は被害者である」と主張し、「彼女は必ず自分のもとに戻ってくるはずだ」と、傍からは理解しにくい確信を抱いている。

「ボクは美香を絶対に許さない……。でも美香はきっと帰ってきますよ。だって、ボクは美香のことなら何でも知っているんだから。ゴキブリは平気だけど、クモやバッタは嫌い。フライドチキンは好きだけど、鶏肉の煮物は嫌い。彼女の細かな好みやクセを、ボクだけが全部知っているんですよ」

ストーカーによる凶悪事件が跡を絶たない。

昨年10月には東京都三鷹市で、当時女子高生だった鈴木沙彩さんが、自宅に侵入した元交際相手である池永チャールストーマス被告に、首や腹を刺されて殺害される衝撃的な事件が起きた。翌11月にも、千葉県市川市で当時22歳の湯浅栞さんが路上で刺殺される事件が発生。これも、以前に交際・同棲していた男がストーカー化して起こした事件だった。

自分が拒絶されたことを認めることができず、執拗に付きまとった挙げ句、最後は愛しているはずの者を惨殺してしまう。

今回本誌は、実際にストーカー行為をしている、あるいはした経験のある人々への接触に成功。彼らはなぜ、相手を殺してしまうほどの執着心に捕らわれるのか。そのメンタリティに迫った。

冒頭のストーカー・佐藤氏が、元交際相手の美香さんと出会ったのは学生時代、アルバイト先のレストランだった。

「美香は当時、まだ高校生。母子家庭で育ったため、お世辞にも裕福とは言えなかった。彼女はいくつものバイトを掛け持ちしていて、ボロボロになっていました。彼女を一目見た時に、思いましたよ。ボクが守ってあげないと、この子はダメになるって」

生活のためにバイトをしていた美香さんとは違い、佐藤氏は父親と祖父が弁護士というエリート一家の生まれだった。佐藤氏自身も弁護士を目指し、都内一流私大の法学部に入学。バイト先で美香さんと出会い、やがて交際へと発展した。

「ボクも美香も、互いに初めての男女交際でした。ボクは彼女と付き合うようになってからアパートを借りて、一緒に暮らすようになりました。交際当初、美香は髪も脱色していたし、ロクな食事もせず荒んだ生活をしていたんですが、ボクがおカネを出してあげて、食事も与えた。そうやって彼女に健康的な生活を与えた。このボクが、彼女の人生を変えたのです」

エリート育ちでプライドの高い佐藤氏の中には、自分は、学歴も収入も低いかわいそうな女の子を救ってあげた救世主であるという気持ちがあったのかもしれない。

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