細川氏の都知事選〝公約〟に現実味はあるか。「自治体発脱原発論」の先例・大阪府市の提言に照らして検証する

東京都知事選がきょう1月23日、告示される。注目の細川護煕元首相や舛添要一元厚生労働相らが22日、相次いで会見し、抱負を述べた。脱原発問題が焦点ではあるが、2人は原発依存度を下げていく点については違いがない。

細川は「現在の『原発依存型のエネルギー多消費型社会』を180度、方向転換しなければだめだ。再稼働にストップをかける」と訴える一方、舛添は「長期的に原発依存度を下げていく。ただエネルギー政策は国の問題だ」と述べた。

すると、2人の違いはどこにあるか。いま日本の原発が1基も動いていない中で、細川は再稼働反対を唱えているのだから、論理的に「即原発ゼロ」を目指している。舛添はそうではなく長期的に脱原発を考え、国に政策を委ねるという立場である。

私も中長期的に脱原発を目指すべきだと思うので、こうした議論が盛り上がるのは歓迎である。ただ前回コラムにも書いたように、細川が再稼働反対=即原発ゼロを唱えても、自分には権限がない話だから、公約にはならない。

公約とは「自分が当選したら、これを実行します」という国民に対する政治的約束である。実行できない話を唱えるのは「私の信条はこうです」と政治姿勢の表明にとどまる。ここを有権者がどう受け止めるか。

これも選挙の一形態であるとは思うが、私は候補者には選挙で当選したら実行できる政策を約束し合って戦ってもらいたいと考えるから「これでよし」とは言いがたい。はっきり言えば「それでは選挙が単なる人気投票になってしまう」と心配する。

「即ゼロ」の細川氏、「2030年を想定」の大阪

実は、原発を止める権限がない地方自治体が脱原発を目指して活発に動いた先例がある。それは橋下徹大阪市長が率いる大阪府・市だ。橋下は「大阪府市エネルギー戦略会議」を設けて、有識者らが脱原発に向けた議論を重ねた。

成果は2013年5月に「大阪府市エネルギー戦略の提言」として報告書にまとめられている。副会長として議論をリードした1人が今回、細川陣営のブレーンに加わっている元経産官僚の古賀茂明である。したがって、細川の脱原発論も古賀の主張、あるいは大阪府市エネルギー戦略の提言の影響を受けているとみていいだろう。

そこで提言を読んでみると、なんと書いてあるか。まず、なぜ大阪府市がエネルギー戦略を掲げるのか、という点である。

それは第1に、大阪府市がエネルギーの大消費地である。第2に琵琶湖を水源としているから、万が一、事故が発生した場合、大阪府市が「被害地元」になる。第3に、エネルギー産業が集積しているから、新たなエネルギー社会を目指すことで関西の経済成長の原動力になる。そして第4に、大阪市が関西電力の筆頭株主だから、市民と顧客の安心安全を求めるべき立場にある。

加えて根本の議論として「新しいエネルギー社会を目指すには、地方がその特性に応じて自主的にエネルギー政策を策定することが必要」であるという。

これらの主張に異論はない。

ただ、この主張を東京都にあてはめてみると、どうなるか。2番目の大阪が被害地元であるという話は、東京には当てはまりにくい。福島原発事故で東京も放射能に汚染されたが、限定的だった。4番目については東京電力の場合、筆頭株主は国の原子力損害賠償支援機構であり、大阪とは事情が異なる。

実際、大阪市は関電の筆頭株主である立場を利用して、関電にさまざまな要求を突き付けていったが、東京都は東電に対して大阪ほど強い立場にない。

細川の主張と決定的に異なるのは、大阪の提言が「即脱原発」にはなっていない点である。提言は終章で「エネルギー戦略の工程表」を記しており、そこには「2030年に原発ゼロになると想定した」と明記されている。そのうえで2017年度までの5年間にやるべき仕事を書いている。

つまり、細川は再稼働反対=即原発ゼロを求めているが、先達である大阪は2030年の原発ゼロを求めていたのだ。大阪の試みは当時、自治体として画期的だったが、それでも熱心な議論の末にまとめられたのは現実的な結論にとどまっていた。

今回、東京都は大阪に比べても肝心の権限が乏しい、というかほとんどないのに、細川が即ゼロを唱えるのだとしたら「現実離れしている」という批判は免れないのではないか。

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