「講座: ビジネスに役立つ世界経済」
【第31回】 ユーロ圏経済の次なる展開

〔PHOTO〕gettyimages

ギリシャ、ポルトガル、スペイン、イタリア等「周辺国」の財政危機・金融危機によって長らく停滞を脱することができずにいたユーロ圏経済だが、昨年半ば以降、ようやく回復の芽が出てきたとの見方が台頭している。確かにこのところのユーロ圏の景況観指数(総合PMI)をみると、2013年12月時点で52.1と、2013年7月以来、6ヵ月連続で景気判断の分かれ目となる50を上回っている。

ただし、主要国で明確に景気回復基調が強まっているのはドイツくらいである。財政危機に苦しんできたスペイン等の周辺国、及び中心国でもフランスは、加速度的な景気悪化の局面は脱しつつあるものの、まだまだ景気回復とは言い難いというのが現実であろう。

だが、ここにきて、ユーロ圏経済に大きな変化が訪れている。それは、「ユーロ内不均衡の是正」である。すなわち、従来の「ドイツ、オランダの経常収支黒字・他国の経常収支赤字(しかも黒字幅、赤字幅ともに拡大)」という構図が大きく変わってきているのだ。

加盟国間の不均衡が広がった理由

現在のユーロ圏諸国の経常収支の状況をまとめると、以下の3点に集約される。

1)ドイツの経常収支の緩やかな拡大
2)ギリシャ、ポルトガル、スペイン、イタリア等の財政危機に見舞われた国々の経常収支赤字の急激な縮小、及び黒字への転換
3)フランスの経常収支赤字継続(主要国ではほぼ唯一)

また、ユーロ圏全体では、経常収支黒字は拡大している。

そもそも、ユーロ加盟国の問題は、「単一通貨にもかかわらず、加盟国間の不均衡が著しい」点にあった。

理論的には、対外不均衡は、為替レート変動による調整(経常収支黒字国の通貨の増価、経常収支赤字国の通貨の減価)か、多国間の資本や労働力の移動による生産水準の平準化(これが、経常収支黒字国の輸出を減少させ、経常収支赤字国の輸出を増加させる)によって是正されるはずである。だが、ユーロ圏の場合、参加国間で単一通貨を導入しているため、為替レート変動による調整は機能しない。

また、単一通貨導入でユーロ参加国間での資本移動はよりスムーズになったものの、各国で社会保障制度(雇用保険や年金)や雇用制度が大きく異なるため、労働移動は円滑に進まなかった。そのため、ユーロ導入時の参加国(特に安価な労働力を有していたと思われていた周辺国)の思惑とは裏腹に、生産水準の平準化は実現しなかった。

このような状況下で、ユーロ圏では周辺国(ギリシャ、スペイン等がその代表例)で不動産ブームが起こり、内需拡大から経常収支赤字がさらに拡大した。そして、リーマンショック後のユーロ圏の不動産バブル崩壊によって、これらの周辺国では景気下支えや金融システム安定化のための財政支出が拡大したため、財政赤字が拡大した。ECBは金融緩和を行ったが、金融緩和によるユーロ安がドイツの輸出を拡大させたことからドイツの経常収支黒字が拡大し、さらにユーロ内不均衡が拡大した。

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