シリコンバレーはわれわれを滅ぼすか?
『現代ビジネスブレイブ グローバルマガジン』---「ニューヨークタイムズ・セレクション」より

ITは万能ではない

2013年に私が読んだ中でもっとも重要な本は、ジャロン・ラニアーの『未来は誰のもの?』(Who Owns the Future? 未邦訳)だ。この本が出版されたのは5月だが、読んだのは年も終わり近くになってからだった。しかし、それは思いがけずよいタイミングとなった。

大不況の後で失業率が7%あたりで停滞する様相となり、何千という国家安全保障局の文書が漏洩したことが毎日のニュースとなり、そしてデジタル経済の中でプライバシーの侵害が引続き話題となった時期に、『未来は誰のもの?』は、それらを全部ひっくるめた普遍的理論ともいうべきものを示してくれた。

さらにこの本は、社会の隅々で避けることのできない威力を振るうソフトウェアは、害を及ぼすのではなく、健全なものとなることを確実にするための挑発的かつ斬新なアイデアも提供している。

ラニアーは、デジタル経済を批判するうえで滅多にない権威を持った人物である。と言うのも、彼はデジタル経済が生まれたときに、事実上そこにいたからだ。彼は様々なことをやったが、そのひとつに、初めてバーチャル・リアリティ製品を売る会社を作ったことが挙げられる。

彼が起業した別の会社は、グーグルに売却された。さらに、『未来は誰のもの?』に書かれているように、彼は「ウォルマート、ファニーメイ、大手の銀行やヘッジファンド」のコンサルタントの仕事も経験した。しかし多くの似たようなテクノロジストとは違い、彼は最終的に、デジタル・ネットワークの進歩は決して万能の解決策とはなり得ないと感じるに至った。

それどころか、彼はこう書いている。

「これらの多岐にわたる世界に携わった後に分かったことは、それらが驚くほど似ているということだ。多くの場合、大手の一流会社はデジタル・ネットワークからものすごい利益を得たが、同時に彼らは同じ力学に制約されていた、いや、その虜となっていたとさえ言える」。

自分たちに大きな優位性をもたらしたネットワークの効率性そのものが、時間とともに、自らの失敗を招くものとなるのだ。

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