テレビ史の汚点になる前に、日テレは『明日、ママがいない』の放送中止か軌道修正を考えるべき!

テレビは見る側を楽しませるもの。あるいは有用な情報を伝えてくれるもの。人を傷つけたり、悲しませるものではない。わざわざ書くまでのことではなく、誰にでも分かっている話だろう。

さて、日本テレビで15日に始まった新連続ドラマ『明日、ママがいない』(水曜午後10時)について、熊本市の慈恵病院が「差別に満ちた内容。子供の人権侵害につながる」として、日テレに放送中止を求めると発表した。全国児童養護施設協議会も日テレに抗議文を出すという。

日テレは放送中止も視野に入れ、軌道修正を考えるべきだろう。BPOなどの判断を待つまでのことではない。たとえ大半の人が喜ぶドラマであろうが、傷つく少数派を切り捨てて良いということにはならない。

人を傷つける「大嘘」をついてはならない

このドラマの舞台は児童養護施設。登場する施設長(三上博史)は、子供たちに対して暴言を吐いたり、顔を叩いたり、日常的に虐待を行っている。親から「赤ちゃんポスト」に預けられた経緯があるため、周囲からポストと呼ばれる少女が主人公(芦田愛菜)だ。現実に赤ちゃんポスト(こうのとりのゆりかご)を設置して、子供の権利擁護に躍起になっている同病院としては、看過できないだろう。職業への差別意識や偏見を招き兼ねないから、児童養護施設の関係者も黙ってはいられないはずだ。

ドラマの中では、施設長が子供たちに向かって、「おまえたちは(養子縁組や里親が現れるのを待つ)ペットショップの犬と同じ」と言い放ったり、「芸の一つも出来んか」となじったりする場面がある。児童養護施設にいる子供たちや過去に施設で過ごした経験のある人たちの中には傷つく人もいるに違いない。児童養護施設関係者に対する偏見を招くと言われても仕方がない。

もともとドラマはすべて嘘なのだが、今回のケースは大嘘の部類であり、しかも人を傷つけてしまう怖れがある点でタチが良くない。なにより、子供が関係するのだから、問題は深刻だ。嘘だからといって、どんな描写をしても良いというわけではない。表現の自由とは別次元の話だ。

ドラマは嘘なのだが、『半沢直樹』(TBS)の放送後、就職先に銀行を選ぼうとする新卒者が急増したのは知られている通り。『ミスパイロット』(フジテレビ)の制作に全日本空輸(ANA)が全面協力したのも企業イメージがアップすることを期待してのこと。ドラマは嘘だが、見る側の印象を確実に操作するのは事実なのだ。

地上波は水道や電気と同じ性質のインフラであり、「安心」と「信頼」が売り物。そんな地上波におけるドラマツルギーの大原則は、人権に配慮し、職業を貶さないことだろう。地上波の枠内に収められない作品を見せたい制作者には、映画がある。映画には「R-15」などの観覧制限もあり、誰の目にも飛び込むわけはない。

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