東京都だけで「脱原発」は実現できない!電力自由化と原発国有化で道筋をつけるべきだ
若田光一さんが公開した関東地方の夜景

国際宇宙ステーションに滞在中の若田光一さんのツイッターは興味深い写真が多い。上の写真は、昨年11月18日のツイッターに載っていた関東地方の夜景である。

東京都心が圧倒的に明るい。ということは、電気を大量に消費していることを物語っている。その東京都知事選で、原発問題が争点になろうとしている。

細川護煕元首相が、小泉純一郎元首相の応援を受けて、出馬するからだ。もちろん「脱原発、即原発ゼロ」を政策の柱としている。先週の本コラムでも書いたが、本来は、知事で決められることはなく、知事選にふさわしくない話題だが、政治的には争点になるだろう。

もっとも、舛添要一氏も主張は脱原発であるので、細川氏との間に大きな違いはない。あるとすれば、経済への影響の観点で、より具体的には、原発の「即ゼロ」か「漸次ゼロ」かの違いだ。

細川氏は、ジャーナリスト池上彰氏の著作の中で、「日本も、10年か、20年か、30年かかるかわからないにせよ、『即原発ゼロ』にするんだと明確に言い切ったほうがいい」と言っている。応援する小泉氏も、「即ゼロ」がいいという。

この「即ゼロ」は、原発再稼働を認めないという立場である。ここ半年で、7電力会社から9原発16基の再稼働申請が行われているが、これらは原子力規制委員会が審査し、地元自治体の同意手続きがある。この中に、東京電力の柏崎刈羽原発6号炉・7号炉が含まれているが、東京都知事の出る幕はない。せいぜい新潟県知事の同意に圧力をかけるくらいだろう。

東京電力の発電所は、青森県、福島県、新潟県、茨城県、千葉県、東京都、神奈川県、長野県にあるが、東京都には、大井火力発電所(105万kW)、品川火力発電所(114万kW)、八丈島地熱・風力発電所(1.5万kW)しか発電施設がなく、これは東電管内の発電設備の3%程度の能力である。なお、東京電力のサービス区域は、栃木県、群馬県、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、静岡県の富士川以東であり、東京都知事だけがサービス地域の代表になれるわけでないことはいうまでもない。

以上のことは、原発を含む電力問題が東京都だけでは処理できないことを如実に示している。あえて白地に絵を描けば、県より広い「道州」の問題である。近い将来に道州制が導入されれば、関東は東京都と関東州に分かれるだろうが、そこで脱原発をふくむ電力問題を解決すればいい。道州制ができるまでは、国の問題にならざるを得ない。

東京の消費電力を『地産地消』でまかなうのは無理

さらに、細川氏の公約案では、まだ問題点があるようだ。東京都は「省エネ都市」を宣言し、「都内で必要とする電力は都内で供給する『地産地消』が最終目標」するという話がある。その上で、都が大株主の東電に、太陽光発電や風力発電、バイオマス発電を建設するよう要求するという。

これはちょっとクビを傾げてしまう。八丈島のようなところで地熱・風力発電所で『地産地消』はわかるが、東京都では無理だ。東京の電力消費量は東電の3分の1であるが、現時点では発電能力は東電の3%であり、今の10倍以上の発電所を東京都に建設しなければいけなくなる。

ちょっと頭の体操だが、2000万kWの発電を太陽光だけ行うとすれば、1000平方キロ程度の土地が必要になる。東京都の面積は2188平方キロなので、都下も含めて、東京都の半分を太陽光パネルで覆わないと2000万kWの発電はできない。東京都という狭い地域で考えると、いかに『地産地消』が困難であるかがわかるだろう。

たしかに、「即ゼロ」は、政治的にはわかりやすいメッセージである。これが受けやすい背景としては、自民党は、なんだかんだと言って再稼働を既成事実として、大震災前のように脱原発ではなく原発推進していく魂胆があると、国民は思っているからだろう。

もし本当に、例えば20年後に原発ゼロという政策が担保されていれば、ここ数年の再稼働を認めるかどうかは、あまり本質的ではない。

本コラムの読者であれば、筆者が、市場原理を使った脱原発論者であることをご存じだろう(2012年9月10日付2012年12月3日付)。この立場にから見れば、「即ゼロ」は特定の価値観による一方的な措置であり、すべての参加者が納得できるような話にはなりにくい。発送電分離などの市場原理を使えば、長期的な原発コストは高いので、電力業者も市場原理の中で原発を漸次フェードアウトしていくことが可能である。

しかし、今の自民党では、原発コスト高を認めず、再び原発推進を復活させる可能性がなきにしもあらずだ。先週の本コラムで指摘した「エネルギー基本計画」が先送りになったのは朗報だが、その中身は相変わらず原発推進のほうに向いているのは気がかりである。

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