雑誌 企業・経営
「商売は、売る側に値段を決める権利はない」と考えます。売れる値段の中で、よい品をつくるべきなんです。
アルペン 水野泰三

一代で2000億円企業を築いた社長の登場だ。「アルペン」「GOLF5」「スポーツデポ」を経営する、アルペンの水野泰三社長(65歳)。小売業だけでなくプライベートブランド(以下PB)商品をヒットさせ、現在、一大メーカーとしての側面も持つ。さらに、ウインタースポーツ市場が縮小の兆しを見せると、ゴルフ、アパレルなど他分野にも進出し、成長を継続させている。そんな究極の〝商売上手社長〟は、いたずら小僧のような人物だった。


「商売は、売る側に値段を決める権利はない」と考えます。売れる値段の中で、よい品をつくるべきなんです。みずの・たいぞう/'48年、愛知県生まれ。'71年にシロヤスポーツ商会へ入社。翌'72年7月、アルペンを設立し、以来現職。'83年に「GOLF5」を出店。'97年には大型スポーツ用品店「スポーツデポ」1号店を開店。'06年、東証一部上場を果たし、'13年には中国上海市に海外1号店を開店した。'05年に名古屋商科大学大学院でMBAを取得 ※アルペンのWebサイトはこちら

泥棒が恩人

23歳で店を構え、その直後、在庫をほぼ全部盗まれてしまったんです。しかし、当座の現金を稼ぐために手形で仕入れた商品を激安で販売したら、これが当たって「アルペン=安売り」の方向性が定まった。弊社の恩人は泥棒なんです(笑)。

背水

'70年代、どこよりも早くPB商品を売ったのが飛躍のきっかけでした。盗難後の危機を何とか脱したら、今度は安売りが原因で小売店の組合からにらまれ、メーカーから商品を卸してもらえなくなった。困り果ててウエアを韓国で生産したら、2万~3万円するはずの品が2000円で生産できて、大当たりしたんです。ピンチになると、革新的な案が湧き出てくる。机を囲んで話し合っても何も出てこないのに(苦笑)。

破天荒

前例のない売り方にも挑戦しました。ウエアを韓国の製造業者から安く調達するには、数万着もの発注が必要で、小さな店には収まらず、また困り果てた。

そのとき、スキーシーズンだけ空いていて、かつ知名度もある巨大なスペースを思い出したんですよ。野球場です。すぐ大阪球場に行き、「貸しますが、そんなに売れますかね?」と心配されつつ仮設店舗をつくると、3ヵ月で12億円売り上げた。成功を受けて別の会場でも展開し、最後は撤収をラクにするため、備品の蛍光灯や電卓まで売りました(笑)。