【文部科学 その7】 「東京五輪2020」に向けスポーツのすそ野を広げ・強化し、健康維持するスポーツ立国を!
〔PHOTO〕gettyimages

2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催が決まったことは日本にとってすばらしいことだ。筆者は、9月7日の未明に、六本木のカフェで多くの仲間とブエノスアイレスと電話で繋がりながら、テレビをつけて吉報を待ったものだ。東京と決まった瞬間の感動は、今も忘れられない。

2020年東京オリンピックの開催は、今後、確実に日本のスポーツ界の熱量を沸騰させていくだろう。問題は、オリンピックを「点」で終わらせるのではなく、オリンピックに向けて社会全体でスポーツを盛り上げていき、オリンピック終了後も継続して日本のスポーツが活性化するようにできるかどうかだ。

「スポーツが国にとって何の役に立つのか?」「政府が税金やマンパワーなどのコストをかけてスポーツを振興することに、どういった正当な費用対効果があるのか?」といった質問に、政府は答える必要があろう。

スポーツを振興することには十分な正当性があると言えよう。まず、スポーツは人々に大きな感動や楽しみをもたらすとともに、人間の健康の保持に役立つ。スポーツを通して、国民の健康を維持し、国民医療費の増大を抑制することも期待できる。

加えて、現代においてはスポーツによる関連産業の広がりが新たな雇用を生むという意味での経済効果も極めて大きい。サッカーや野球は日本でも大きな産業であるし、ジョギングブームなどによる関連産業の広がりは大きなビジネスになっている。

オリンピック、サッカーワールドカップといった世界的なスポーツの祭典の経済効果も大きい。東京オリンピック招致本部の試算によると、2020年の東京オリンピック開催による国内の経済効果は2兆8,342億円になるという。また、ブラジルスポーツ省も、今年(2014年)のブラジルワールドカップ開催による直接的な経済効果が1.8兆円になると試算している。

さらに、スポーツを通じて国際交流が活性化するという側面も見逃せない。スポーツは世界共通のルールの下に、言語と文化の壁を超えて行われるものである。そのため、他国との相互理解や友好親善に大きな役割を果たす。また、スポーツ人脈を使った独自の外交という側面も活用に値する。卓球の福原愛選手であれば中国共産党幹部と簡単に会うことができたり、柔道好きのロシアのプーチン大統領は、井上選手であれば簡単に会ってくれたりするという例もある。

このように、スポーツは国民の健康と幸福、関連産業による雇用創造、外交・国際交流といった面で、国と国民の生活を豊かにする。オリンピック・パラリンピックの東京開催を良いチャンスとして、日本のスポーツを強くし、かつ、地域とスポーツをうまくリンクさせて、国民全体がスポーツによる利益を享受できるようなスポーツ立国を進めるべきであろう。

1. 学校体育、部活動だけに頼るのではなく、学校外のスポーツクラブの拡充を!

日本のスポーツの根本的な問題点は、小学生から高校生までの子どもたちのスポーツのほとんどが、学校の体育と部活動だけに依存していることだ。

文部科学省は、子どもたちの基礎的運動能力の低下に歯止めをかけるため、学習指導要領の改訂で、小・中学校の体育科・保健体育科の年間標準授業時数を改訂前の90時間から105時間に増加するといった政策を行っており、それ自体は否定するものではないが、学校以外の地域でより一層スポーツを行うことが出来る社会が望ましい姿だ。

中学や高校の部活動も、スポーツを通じて運動能力だけでなく社会生活の学習を生徒たちが行うことができる極めて貴重な機会だが、近年の部活動においては、教員数の減少で先生たちの練習・引率等の負担が大きくなっている問題や、指導内容が専門的になっていることで適確な指導者がいなくなっている問題が生じている。そもそも体育科以外の学校の先生はスポーツ指導の専門家ではなく、教員が部活でスポーツを教えることには限界があるのは容易に理解することができる。

このため、日本のスポーツを強くし、かつ裾野を拡げるためには、これまでの政策のように学校体育を強化するというだけでなく、学校外のスポーツクラブの強化・活性化という視点が重要だ。

筆者は、中学校時代に水泳部に所属していた。だが、速い選手は全てスイミングクラブに所属していた。そこで1年生の9月にスイミングクラブの門戸を叩いた。その結果、県の中学記録を塗り替えるまでに、速くなれた。筆者の中学は、剣道も強かった。これも学校の部活動ではなくて、近くの道場での練習による賜物だ。

この様に各種スポーツを専門性を持って指導できる地域のスポーツクラブが、拡充してくれば、学校教育現場との連携も可能となる。2012年から中学校ではダンスや武道も必修となっている。学校教育と地域の連携を進めて学校現場への外部からの指導者の受け入れも進めるべきであろう。

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