野球
二宮清純「野茂英雄とアメリカの父」

“私の息子”と擁護

「ヒデオ・ノモは日本におけるジャッキー・ロビンソンのような存在である」
 そう語ったのはドジャースで20年間に渡って監督を務め、チームを4度のリーグ優勝と2度のワールドチャンピオンに導いたトミー・ラソーダさんです。

 ジャッキー・ロビンソンといえば黒人初のメジャーリーガー。そんなレジェンドと並び称されれば野茂英雄さんも望外の喜びでしょう。

 日本人メジャーリーガーのパイオニアである野茂さんを、ラソーダさんは「マイ・サン」と呼んでかわいがっていました。日本プロ野球で4年連続最多勝に輝いた実績を持つ野茂さんとはいえ、メジャーリーグでは一介のルーキーに過ぎません。渡米当初は厳しい視線を向ける関係者も少なくありませんでした。

 しかし、ラソーダさんは「ひとりで海を渡ってやってきた勇気ある青年を、もっとリスペクトすべきだ」と言って終始、野茂さんを擁護しました。

 ある試合でノックアウトされた時のことです。野茂さんは通訳とともに監督室に呼ばれました。緊張してドアをノックすると、そこには人懐こい笑みを浮かべたラソーダさんがいました。

「何か問題があるんじゃないか。悩みがあるなら話してほしい」
 そして、こう続けました。
「オレたちはファミリーだ。何か助けてあげられることがあったら、助けてあげたい。オレはキミたちのマネジャーだから、グラウンドを管理するだけじゃなく、私生活でも力になりたいんだ」
 この一言で、野茂さんは「救われた思いがした」と語っていました。