現代新書
米軍が見た日本軍
『日本軍と日本兵』著者・一ノ瀬俊也氏インタビュー

一ノ瀬 俊也

「集団的自衛権」の見直し、首相の靖国参拝など、周辺諸国から「軍国主義化」の懸念も表明され始めた、このところの日本。では、「あの戦争」を、70年前の日本人はどのように戦ったのだろうか? 『日本人と日本兵』(講談社現代新書)著者の一ノ瀬俊也氏に、敵であるアメリカ軍の目に映った日本兵の赤裸々な姿について話を聞いた。

実は弱かった「日本軍」?

米軍という他者の視点を導入することで、日本人にはみえないものがみえるかもしれない、という

――単刀直入に言って、米軍の日本軍に対する評価はどうだったのでしょう? 高かったのか、低かったのか?

一ノ瀬 同時代の他国陸軍との比較ということであれば、決して高くありません、というより低いです。当時のヨーロッパにおける陸戦はまず航空部隊が敵の正面から後方まで爆撃し、続いて戦車部隊が前面に出て敵陣を突破、これを後続の歩兵部隊が占領するという機甲戦になっていますが、これに関する日本軍の装備・戦術は最後まで日中戦争レベルに過ぎない、という低い評価です。各戦場で相当に抵抗できたのも、戦車が自由に行動できないジャングル地帯を戦場として選べたからに過ぎない、平地であればひとたまりもないと指摘されています。また、日本軍将校については「体面と志操の維持が最も重要であり、それゆえ空想的な英雄気取りとなりがちである」とこれまた評価が高くありません。兵士についても、集団で将校の命じる通りに発砲するのは上手だが、その将校を撃たれたとたんに四散してしまう、といった程度の評価です。

――「日本兵超人神話」というのがあったそうですが、これはどういうことですか?

一ノ瀬 太平洋戦争が始まるまでアメリカ人は日本人を侮っていたのですが、いざ開戦すると一方的な敗北を被りフィリピンはじめ広大な地域を占領されてしまった。この衝撃が逆に、日本人は超人ではないか、という疑念を米軍将兵の間に生み出しました。

――この本を書くきっかけは何だったのでしょう? また、書くに当たって今回、利用された『IntelligenceBulletin』とはどういう本なのでしょうか?

一ノ瀬 直接的には前著『米軍が恐れた卑怯な日本軍』(文藝春秋)で『The Punch below the Belt』と題する米軍の対日戦マニュアルを取りあげた際、執筆の最終段階で『Intelligence Bulletin』という、怪しげな日本兵を表紙に描くなど(悪い意味で)面白そうな雑誌が存在することに気づいたことです。使命感のようなものを抱くきっかけとなったのは、本屋に行って「日本陸軍は世界最強だった」という意味の題名の本が並んでいたのをみたことです。昔から日本海軍にはゼロ戦と大和のおかげで「世界最強」イメージががあるのですが、三八式歩兵銃で戦争をしていた陸軍にはそれがなかった。にもかかわらず世代交代が進んで陸軍の「時代遅れ」イメージがかすみ、とって代わるかのように夜郎自大的な陸軍最強伝説が作られようとしている。もちろん世代交代自体は必然ですし、その過程で「海軍だけは最後まで無謀な対米開戦に反対した」という海軍善玉説が否定されてゆくなどけっして悪い面ばかりではないのですが、だからといって陸軍が善玉だったとはいい難いし、ましてや「世界最強」だったとはいくらなんでも言えないのではないかということで、では実際のところはどうだったのかを、当の戦争相手たる米軍が日本軍を総体的にどう見ていたか、という点に絞って調べようと思い立ちました。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら