官々愕々 若者を虜にする「安倍の詐術」
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年末年始の新聞記事を読んでいて、「なるほど」と思ったことがある。しかし、それは、決してよい意味での「納得」ではない。

今まで腑に落ちなかったことを理解するカギを見つけたのだが、それと同時に、焦燥感が募る気持ちになった。

そのカギとは、若者の「安倍崇拝」ともいえる現象をどう理解するかということだ。12月29日付朝日新聞が報じた、年代ごとの自民党に対する「イメージ」調査の結果はとても興味深かった。

それによれば、「安定」と「変革」の程度について、1を最も変革、6を最も安定として数字で表して(中間点が3・5)自民党に対するイメージを調べると、年代が若いほど、「変革」のイメージが強くなる。70歳以上では、変革と安定の中間点3・5よりもわずかに「安定」寄りの3・51だが、年代が若くなるに従って「変革」度が高くなり、20代では3・03まで上がるというのである。昨年夏の参院選比例区で自民党に投票した20代は、2・92と特に高い。

一方、もう一つのイメージ軸として、「左寄り」(最も左が1)か「右寄り」(最も右が6)か質問すると(中間点は3・5)、どの年代でも「右寄り」と見ているが、70歳以上では、4・09とかなりの右翼だと見ているのに対して、20代では、3・61と中間点に近いイメージを持っている。

この二つの軸による調査は、筆者がかねてから主張している二つの政策軸による分析をほぼ踏襲したもののように思える。

このコラムでも何回か取り上げたとおり、今後の日本の政治の針路を議論する際に、最も重要な政策の軸が二つある。それは、経済・社会政策の「改革」(民主導・既得権と闘う・バラマキ反対)vs.「守旧」(官主導・既得権擁護・バラマキ志向)という軸(これを横軸として右方向を「改革」、左方向を「守旧」と置く)と、外交・安保政策のタカ派vs.ハト派という軸(これを縦軸として上をタカ派、下をハト派とする)である。この2軸で測れば、政治家の立ち位置が明確化できる。

安倍総理は、明らかに極度のタカ派(図にすれば最上層部)であることに異論はないだろう。一方、改革は叫んでいるが、実際の政策は守旧派寄りだから、左右で言えばほぼ中央だ。予算のバラマキには熱心だが、規制改革などの成長戦略は全く実行できないのがその証左である。つまり、タカ派の似非改革派だ。

一方、朝日新聞の調査結果を私の2つの政策軸に置き換えてみると、20代の若者は、自民党をかなりの改革派でハト派ではないが若干のタカ派(右上=第一象限の中でも下寄り)と見ている可能性が高い。

これまで、若者の「右傾化」と「安定志向ないし保守化」現象は、あちこちで指摘されてきた。安倍自民党の勝因は、若者世論の右傾化と保守化の表れと見る向きもあったが、必ずしもそれは正しくないのではないか。朝日の調査では、愛国心教育について20代が最も消極的だった。命の危険があっても国のために戦うと答えたのも、30代12%に次いで20代13%という低い数字は、右傾化どころか、逆に平和志向が強いともとれる。

その若者に安倍氏支持が多いのは何故か。若者たちは、安倍自民党がタカ派で、実は守旧派であることに気づいていないからだ。

若者が、実は、「改革志向で平和志向」なら、筆者の分類では、右下の領域=「第4象限」の潜在的支持層だ。しかし、そこを代表する政党はない。

「安倍の詐術」の虜になった若者を解放するには、真の「第4象限の党」の出現に期待するしかない。

『週刊現代』2014年1月25日・2月1日号より

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話題作『原発ホワイトアウト』著者・若杉冽氏推薦! 「霞が関には古賀さんを隠れキリシタンのように慕っている官僚たちがいる。原発の裏も表も全部わかる必読書」

原発は「倫理的」に許されないエネルギーだという議論をすると、それは「感情的」あるいは「主観的」な議論であるというレッテル張りをされる傾向があります。経済論や技術論は受け入れられても倫理論は受け入れられないのが現状だと言ってよいでしょう。しかし、倫理の問題は、経済や技術の分野でも非常に重要な問題です。二人の元総理(小泉氏と細川氏)が期せずして脱原発を「人の生き方の問題」「倫理の問題」として語り始めたことは、極めて重要な意味があります。私が小泉氏や細川氏に期待するのは、大きな哲学、「脱原発の倫理観」を国民に提示し、国民的大議論を巻き起こすことです。議論の末、国民の大多数が新しい日本の生き方、「脱原発と再生可能エネルギーで、自然とともに生きる国日本」を目指すという共通の目標に到達すれば、その時初めて、脱原発が可能になるのだと思います。――<「はじめに」より抜粋>

※本書は2013年5月に先行発売した電子書籍『原発の倫理学 古賀茂明の論考』の内容を大幅にアップデートした上で再編集したものです。