地震・原発・災害
「脱原発」ばかりが争点でいいのか?権限の及ばぬ問題で「運動論」競う都知事選への違和感

東京都知事選は自民党が支援する舛添要一元厚生労働相と小泉純一郎元首相が支援する細川護煕元首相を軸に戦われる構図が決まった。焦点は小泉・細川連合が掲げた「脱原発」である。

私も原発は止めたほうがいいと思っているので、原発への対応が議論になるのは歓迎したい。ただ、それが都知事選の焦点となると、正直言って戸惑ってしまう。都知事に原発を止める権限はないし、実質的に意味がある脱原発政策を都知事が展開できるとは思えないからだ。

再稼働、最終処分、核燃料サイクル。都知事にできることはない

脱原発にはとりあえず、乗り越えねばならない3つのハードルがある。まず原発再稼働をどうするか。再稼働するかどうかは、原子力規制委員会がチェックしたうえで政府が決める。このプロセスで都知事に権限はない。

それから使用済み核燃料、いわゆる核のゴミ問題である。政府は最終処分場を探しているが、これといった候補は見つかっていない。そもそも最終処分が可能であるかどうかについて大きな疑問がある。

日本最高の学者の集まりである日本学術会議は2012年9月に「万年単位の超長期にわたって安定した地層を確認するのは、現在の科学的知識と技術的能力では限界がある」として、後で取り出せるように、数十年から数百年間の暫定保管を提言した。

ところが、その暫定保管さえ具体的にどこにどう埋めておくか、議論は進んでいない。都知事が脱原発を唱えたところで「東京都内のここに埋めよう」という話になるとは考えにくい。

3つ目は核燃料サイクルをどうするか。小泉元首相は「核燃料サイクルも直ちに止めるべきだ」と主張した。そうなると、六ケ所村に再処理施設がある青森県は「いま預かっている使用済み核燃料を六ケ所村に置いておく理由がないので、それぞれの原発に返す」という話になる。

それだけではない。日本は原子力を平和的に利用する目的で米国と原子力協定を結んでいる。1988年7月の協定改定では、米国が六ケ所村の再処理工場で使用済み核燃料からプルトニウムを取り出すことも認めた。

日本が六ケ所村の再処理施設を止めるなら、米国が黙っていない。米国にとって原子力協定は安全保障問題である。プルトニウムの精製は日本だけに例外的に認めたのに「もう止める」となったら、直ちに「プルトニウムはどうするのか」という話が持ち上がる。

日本がプルトニウムも濃縮ウランも米国に返して原発技術も放棄するという話になれば、世界の原発市場はロシアと中国に席巻されかねない。そうなると、米国は核管理に手が届かず、核がテロリストに流出する可能性も出てくる安全保障上の一大事とみて、猛烈に抵抗するだろう。つまり外交上の大問題になる。

現行の日米原子力協定は2018年7月に期限切れを迎える。協定をそのまま継続するか改定して続けるか、あるいは破棄するかは都知事の仕事ではなく、日本政府の仕事である。

以上のような脱原発の肝になる3つのハードルのどれをとっても、都知事にできることはほとんどない、と言っていい。

ちなみに東京電力については、都が1.2%の株式を保有する第4位の大株主だが、過半数は国の原子力損害賠償支援機構が保有しているので、都が経営の決定権を握っているわけではない。

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