靖国参拝は外交問題ではなく、日本人の哲学の問題

古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン Vol078---「日本再生のために」より

〔PHOTO〕gettyimages

太平洋戦争を肯定するのかどうか

安倍総理の年末の靖国神社参拝に関して、様々な議論が行われているが、予想外というか、予想通りというか、国内の安倍批判はそれほど強くない。マスコミの論調は、参拝による外交・経済面でのマイナスを強調して、実利的観点からその問題点を指摘しているが、参拝そのものの問題点については、両論併記的な論調で伝えるところが多い。

しかし、この問題を外交や経済の問題として扱ってしまうのは、極めて危険だ。何故なら、この問題の背後には、今後の日本の生き方に関わる、国家の基本的な「哲学」の問題があるからだ。

日本を取り巻く国際環境が、冷戦時代やその後の米国中心の国際秩序から大きな変化を遂げ、特に中国の台頭とその膨張主義的な行動が我が国に大きな脅威をもたらしているという厳しい現実を前にして、これまでの日本の外交・安全保障政策の基本的な哲学を変えようという考え方がある。

日本国憲法では、本来は、武力による紛争解決は否定しているし、軍隊も保有しないという考え方を取っていた。これを、占領軍による押し付けだというのが安倍晋三総理や自民党主流派の考えだ。日本維新の会の綱領も同じと言って良いだろう。

一方、日本国憲法の哲学を、日本人自らが、太平洋戦争の惨禍を省みて、戦争だけはどんなことがあっても止めよう、そのためには軍隊の保持さえ止めてしまおうと考えるのは自然なことだった、という平和主義的な考え方も強い。自衛隊を違憲だとする学説も当初は通説だった。

憲法をGHQの押し付けだとする人達には、そもそも、太平洋戦争は日本による侵略戦争で、国際的にその正当性が否定された、ということを認めない向きが多い。彼らは、太平洋戦争を全面的に肯定する訳ではないが、日本だけが悪いのではない、他の帝国主義列強にも責任が少なくとも一部はある、と主張する。そして、最も重要な特色は、他人にも責任があるということを強調することによって、あたかも、自らは正しかったと思いたい、従って、決して侵略した相手国に対して謝りたくない、という気持ちを持っている。さらに、いわゆる戦犯と呼ばれる人達の罪についても、東京裁判の正当性を否定して、認めたくないという気持ちを持っている。

ただし、そうした主張をしても国際的に勝ち目がないことはよく理解しているので、公に侵略戦争を否定して太平洋戦争が正当だったとか、戦犯に罪はないなどという主張をすることはせず、公職に就くと、歴代内閣の立場は踏襲しているなどということを装う。これが、事態を複雑にする。

安倍総理もまさにそういう勢力の一人だろう。国会では、侵略戦争の定義について、曖昧な答弁を繰り返し、靖国参拝の際に、A級戦犯合祀の問題を問われても、真正面からは答えいない。本来は、太平洋戦争は侵略戦争でした、A級戦犯は国際的に犯罪者であるから彼らを総理が参拝することは許されないという、はっきりした態度を取れば、靖国参拝自身は大きな問題にならないかもしれない。中国や韓国やアメリカが問題にしているのは、安倍総理の心の中にある、太平洋戦争肯定論である。

そして、このことは、外交の問題として議論する前に、日本人自身の問題として議論されなければならない。(……略)

少なくとも、日本は、太平洋戦争を過ちだったと、国際社会に対して認めたはずだ。それを覆すなら、それなりの論拠と、それに反対する諸国の反発に対する責任を負う覚悟がなければならない。こちらのドアはいつでもオープンです、直接会って真意を説明したいと言っても空虚な言葉になってしまう。(……略)

しかし、安倍総理には、その勇気がないか、或いは、やはり、海外諸国が疑っているとおり、太平洋戦争を肯定し、戦犯は犯罪者ではないと考えているのか、そのどちらかではないかと、私には見える。

右に傾きすぎた総理に上がる情報にはバイアスがかかる

なぜ、このタイミングで安倍総理は靖国を参拝したのか。これについては様々な解説がなされている。国会が終わり、秘密保護法を通し、税制も片付き、予算編成も終えた。東電と銀行を守って、国民の電気料金にしわ寄せさせる仕組みも作った。年が明ければ、アフリカ、アラブ訪問、沖縄名護市長選挙、そして通常国会と大きな課題が待ち構えている。4月にはオバマ訪日も予定されていて、その前後に物議を醸すことは避けたい。参拝して、波風が立っても、年が明ければ、気分も変わりやすい。などと考えると昨年末はちょうど良い時期だったということだろう。

そして、何よりも、安倍総理は「中韓は何をやっても同じ」と見ている。これまで一年間、中韓に気を遣って、靖国参拝を見合わせて“やった”のに彼らの態度は変わらない、という思いから、「だったら参拝しても同じじゃないか」という判断につながったようだ。おとなしくしていても強気に出ても結局のところ、うまくいかない。だったら、とりあえず、思いっきり高めの玉を投げておく。

こういうやり方をどこかで見たことはないか。

そう、これこそ北朝鮮のやり方だ。北朝鮮は国際社会から見て無茶なことをする。世界が反発すると、少し戻る。それが外交カードになる、という考え方だ。

(……以下略)

【古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジンVol.078---目次
―第1部― 日本再生のために
 1.東京都知事選は国政選挙と同じ
 2.靖国参拝は外交問題ではなく、日本人の哲学の問題
―第2部― 読者との対話
―第3部― 古賀さんのスケジュール 

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