雑誌 北朝鮮
史上最悪の「兄弟ゲンカ」金正恩は、兄・金正男も「処刑」する気だ
北朝鮮コンフィデンシャル 
週刊現代 プロフィール

「韓国政府の調べでは、犯人は朝鮮労働党連絡部に所属する特殊工作員の夫婦でした。警察が二人を逮捕しましたが、妻はすぐに自殺しています。この時の犯行はもちろん、金正日総書記直々の命令によるものと考えられます」(ソウル在住ジャーナリスト・金哲氏)

金正男としては、いまでも従兄弟が犠牲になった時の記憶が生々しいに違いない。そこで中国にかくまってもらっているというわけだ。

前出の中国の外交関係者が証言する。

「金正男の居所は言えない。彼はわが国の公民ではないけれども、わが国は中国国内の治安を維持する義務がある。北朝鮮はわが国に平気でヒットマンを送り込んでくるような粗暴な国だ。数年前にわが国が厳重抗議したこともあった」

この中国の外交関係者によれば、北朝鮮がヒットマンを送り込んできたのは、'11年秋のことだったという。

「'11年6月に、張成沢からのたっての願いで、中朝国境近くの北朝鮮の島、黄金坪・威化島を、わが国の協力で経済特区に指定した。この時、張成沢と中国の陳徳銘商務相がガッチリ握手を交わし、盛大に経済特区の開所式を行った。

その際、中国人民解放軍の香港でのロジスティックを受け持っている新恒基グループの高敬徳会長に、この新たな北朝鮮の経済特区の行政長官に就任してもらった。だが北朝鮮は同年秋にわが国にヒットマンを送り、上海に滞在中の高会長を刺殺してしまった。その時は当時の胡錦濤主席が激怒し、人民解放軍の代表団が抗議のために訪朝したほどだった」

現在の独裁者は、先代の金正日総書記に輪をかけて獰猛な金正恩第一書記である。中国へヒットマンを差し向けることなど、何とも思わないだろう。金正男が中国政府の協力を得て、いまはただ身を隠している他ないのも理解できる。

加えて今回、張成沢が処刑されたことで、北朝鮮から金正男への送金ルートも途絶えてしまった。となれば、この兄弟ゲンカは正恩が勝利するのか。

「正直言ってわれわれは、金正恩政権が、あと1年もたないのではないかと見ている。内部でクーデターが勃発して、金正恩政権は崩壊するというシナリオだ。これはアメリカ政府の見方とも一致している」(前出・中国の外交関係者)

長年、北朝鮮取材に携わってきた平井久志・元共同通信ソウル支局長は、「正恩が死去する事態になれば、金ファミリーから『後継者』を選ぶ可能性がある」と指摘する。すなわち、金正男のチャンス到来だ。

ともあれ周辺諸国にとっては大迷惑の、まさに史上最悪の兄弟ゲンカである。

「週刊現代」2014年1月18日号より