雑誌 北朝鮮

史上最悪の「兄弟ゲンカ」金正恩は、兄・金正男も「処刑」する気だ

北朝鮮コンフィデンシャル 
週刊現代 プロフィール

張成沢と金正男が意気投合していたのは、二人とも北朝鮮の経済改革の必要性を痛感していたからだという。

「張成沢は党行政部長で、首都・平壌のリフォームの責任者だった。妻の金敬姫は党軽工業部長で、生産増加の責任者だった。この夫妻は金正男を頼り、金正男は中国を頼った。

この3人は、北朝鮮で一刻も早く中国式の改革開放政策を実施しないと、国が崩壊すると危惧していた。張成沢は直接的に金正恩政権を批判したことはないが、金正男は露骨に批判していた」(同・中国の外交関係者)

前出の五味氏も、金正男から、次のような金正恩批判を聞いたことがあるという。

「異母弟の正哲とは、海外で会って何度か話し込んだが、正恩とはこれまで会ったこともない。父上(故・金正日総書記)は厳しくても、愛情が深かった。祖父(故・金日成主席)に容貌だけが似ている弟の正恩が、どれだけ北朝鮮の人々を満足させられるか、私には疑問だ」

金ファミリーの中で金正恩批判を繰り出しているのは、金正男だけではない。'12年10月には、金正男の長男・金韓雪('13年秋にパリ政治学院に入学)が、フランス国営放送のインタビューに答えて、次のように言い放った。

「私は朝鮮半島の統一を夢見ている。いつか北朝鮮へ帰って、住民たちの状況を改善したい。

以前、北朝鮮へ帰った時は、母方の実家にいたので、金正恩第一書記には会ったこともない。国を独裁者が統治しているとは知らなかった」

少しでも気に食わなければ粛清してしまう現在の金正恩にすれば、張成沢の背後にいて、事あるごとに自分を批判してきた金正男は許しがたい存在だ。一方の金正男も、弟・正恩の凶暴な性格が分かっているだけに、身辺を非常に警戒している。

金正男は現在、中国に滞在中とされるが、昨年12月に張成沢が処刑されて以降、表舞台から姿を消してしまった。長男の金韓雪は、パリ警視庁がパリ政治学院の学生寮を厳重警備しているという。

金正男の大逆転もある

思えば、金王朝の骨肉の争いは、いまに始まったことではない。

金正男の従兄弟(母親の姉の息子)にあたる李韓永は、かつて金正男とともに、モスクワやジュネーブに留学していたが、'82年に韓国に亡命。その後、'96年に金ファミリーの暴露本『平壌「十五号官邸」の抜け穴』を、韓国や日本で出版した。するとその翌年、北朝鮮がヒットマンを韓国へ送り込み、李を射殺してしまったのだ。