AI
脳を真似たコンピュータ・チップが登場: 自動運転車や災害対策ロボットの実用化が早まる
〔PHOTO〕gettyimages

人間の脳を手本にしたコンピュータ・チップが実用化されようとしている。これによって「見る」「聞く」「話す」「手足を動かす」など、従来、AI(人工知能)がどちらかと言えば苦手としてきた仕事を、今後は無理なく自然に行えるようになる。また、コンピュータやロボットがビッグデータを教材にして自力で学んで賢くなるため、いずれはエンジニア(つまり人間)が個別の動作プログラムを書く必要がなくなるかもしれない。

●"Thinking in Silicon" MIT Technology Review

●"Brainlike Computers, Learning From Experience" The New York Times, December 28, 2013

上記記事によれば、そのようなチップ(プロセッサ)は「ニューロモーフィック・チップ(Neuromorphic Chip)」と呼ばれている。

ニューロモーフィック・チップは1980年代半ばに考案されたが、近年急速に技術開発が進んだ。今や5年、10年先という気の長い話ではなく、米クアルコム(Qualcomm)のような世界的メーカーが今年中には初代製品をリリースするという。これによって、昨年大きな注目を浴びた「自動運転車」や「災害対策ロボット」などの実用化が早まると見られる。SFの世界がまた一歩、現実へと近づくのだ。

初期の人工頭脳

このニューロモーフィック・チップ(プロセッサ)とは、具体的には、どんなものなのか? それは一言で言うと、ニューラル・ネットワーク(ニューラル・ネット)をハードウエア的に実現したものだ。ニューラル・ネットとは、生物の脳の神経回路網を工学的に再現したシステムだ。

たとえば人間の脳は、約1000億個にも上る「ニューロン(神経細胞)」と、それらが接合する部位である無数の「シナプス」からなる複雑なネットワークだ。脳は「見る」「聞く」「触る」「読む」など外界からの刺激に応じて、異なるニューロン間の接合の強さ(シナプス荷重)を変化させる。これは「ヘッブの法則」と呼ばれ、私達の「記憶」や「学習」を司る基本的な仕組みだ。この仕組みを、コンピュータやロボットの内部で工学的に再現したものがニューラル・ネットである。

これまでニューラル・ネットはソフトウエアとして実現されてきたが、それをシリコン・ウエハー(半導体)上の集積回路(ハードウエア)として再現したものがニューロモーフィック・チップということができる。

つまり、これまでのニューラル・ネットでは、シナプス荷重の変化は単にソフトウエア上の数値計算に過ぎなかったが、これからのニューロモーフィック・チップでは(外界からの刺激に応じて)シナプス荷重が物理的に変化してしまう。驚くべき発明であると同時に、(後々の世代から見れば、非常に幼稚なものに見えるだろうが)黎明期の「人工頭脳」とでも呼ぶべきものだ。

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