降圧剤データ捏造問題を「誇大広告」で刑事告発。薬事行政の欠陥隠す厚労省の「トカゲのしっぽ切り」を許すな!

問題の発覚から実に8か月。ようやく1月8日になって、厚生労働省が、臨床データを捏造し、ありもしない薬効を宣伝文句に市場を席巻したとされるスイス系製薬大手の日本法人ノバルティスファーマの刑事告発に踏み切った。

ただ、同省の発表文によると、告発したのは、「薬事法第66条第1項(虚偽・誇大広告の禁止)違反の疑い」だけだ。独自の調査を行ったものの、データの捏造問題に踏み込めなかったばかりか、容疑者すら特定できなかった。時効の壁が迫る中での告発は、悪質な責任逃れであるとともに、同省の薬事行政の構造的な欠陥を隠すトカゲのしっぽ切りにしか映らない。

厚生労働省と言えば、アベノミクスの「3本の矢」に数えられる構造改革(規制緩和)の大方針に逆らって、自由だった薬のインターネット販売に規制を持ち込んだばかりか、朝令暮改で子宮がん予防ワクチンの接種推奨を取りやめるなど、問題が噴出し続けている。その一方、2014年度予算では再発予防策も打っていないのに臨床研究などに1200億円の巨費を注ぎ込む方針を決めている。

厚労省の綱紀粛正と薬事行政の構造問題に踏み込めるか。安倍晋三政権は新たな重い課題を背負い込んだ格好である。

 薬事法での違法行為立証は困難。詐欺罪に問うべきだった

ノバルティスファーマ問題の発端は、京都府立大学、東京慈恵医科大学、千葉大学、名古屋大学、滋賀医科大学の5校で行われた降圧剤ディオバン(一般名別名「バルサルタン」)を巡る臨床研究で、本来の薬効である「血圧を下げる」こと以外に、脳卒中や心筋梗塞を予防する効果もあるとの結果が出たとされたこと。

しかし、これらの研究について、新聞や週刊誌でデータが改ざんされた疑惑が存在することを指摘する報道が続出。当のノバルティスファーマが昨年5月、幹部社員の支援を受けた元社員が、社員の身分を隠し、「大阪市立大学非常勤講師」の肩書でこれらの臨床研究に参加したことについて、研究内容やデータを歪める「利益相反」のリスクがあり、「不適切だった」と認めていた。

ノバルティスファーマは、この報告でデータ改ざんの疑いを否定できず、各大学の調査でも捏造の疑いを払しょくできなかった。

残念ながら、厚労省にこの問題を徹底的に究明して断罪する覚悟があったとは思えない。問題の存在をノバルティスファーマ自身が否定しなかったにもかかわらず、その後の調査を強制捜査権もない厚労省が抱え込み、誇大広告しか追及の根拠がない薬事法の話に限定してしまったからだ。

こうなると、端からデータ捏造の責任を問えないばかりか、広告にデータを使った者が捏造の事実を知っていて誇大広告に利用したかどうかが論点になり、「知らなかった」と言われれば、違法行為の立証は非常に困難になる。

そもそも、薬事法の誇大広告の公訴時効は3年だから、2011年の問題を立証するために残された時間はわずかだ。8カ月以上も時間を浪費して、証拠隠滅のリスクも大きい。立証が難しくなってから、形ばかりの刑事告発を行い、お茶を濁したとしか誰の目にも映らないだろう。ざっくり言えば、この問題は刑法の詐欺罪として扱った方がよっぽど明快だったはずである。

だが、結果としてであれ、ありもしない薬効をうたい文句に、ディオバンを大ヒット商品に仕立て上げた商法は決して許されるものではない。

なにしろ、ディオバンは、ノバルティスファーマの2012年の売上高(3234億円)の3分の1程度を支える稼ぎ頭だったとされる。この代金は、健康保険と患者が支払ったものだ。ノバルティスファーマの責任を追及できないのならば、厚生労働官僚たちに弁済してもらいたいというのが、高い保険料を支払っている庶民感情というものだろう。

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