「円安を歓迎しない」という財界トップ発言の政治的意図。原発争点の都知事選控え、東電への配慮か

円安嫌う一方で、原発再稼働訴える財界人たち

日本商工会議所の三村明夫会頭(新日鉄住金相談役名誉会長)が年頭会見で「円安になったら日本の株価が上がるのはおかしい」と発言するなど、財界は一段の円安を歓迎しないとの報道があった。経済同友会の長谷川閑史代表幹事(武田薬品工業社長)も「あまり円安は歓迎できない」と同調した。

グラフ①

経済的に考えると、これらはかなり奇妙な意見だ。円安により「原材料価格が上がる」(三村会頭)、「貿易収支の改善を考えていかないといけない」(長谷川代表幹事)という背景があるとしても、一部の経済だけを見ている点でトップの意見としては情けない。

グラフ②

10%の円安は0.2~0.6%の経済成長になるという内閣府の試算を持ち出すまでもなく、円安のメリットはデメリットを上回り、経済全体を成長させる。

グラフ③

どこの国でも似たような話であるが、国際市場で競争している輸出関連産業は、輸入関連産業に比べると国内への内需関連産業への裾野が広く、大きな波及効果があるので、自国通貨安はメリットがデメリットを上回る。経済全体にプラスになるのだ。

グラフ④

こうした円安メリットは株価にも反映する。実際、ここ7年間の日経平均を見ると、為替とリンクし円安になると株価が上昇し、その相関係数は0.87と高い(右グラフ①)。

ちなみに、三村・日本商工会議所会頭の出身会社である新日鉄住金の株価でも、同じ7年間で見て相関係数は0.91である(右グラフ②)。長谷川・経済同友会代表幹事の武田薬品工業の株価も相関係数0.91(右グラフ③)、倉弘・経団連会長の住友化学も相関係数0.85と高く(右グラフ④)、はっきり言えば、株価の帰趨は為替次第である。経営者の主なミッションには株価を高くすることが含まれているので、円安を嫌うのは、株主利益に反している。

こうした老舗企業は、すでに海外展開してきている。そこで円安になれば投資収益が上がるので、円安が企業収益に貢献するのは当然でもある。これまで海外展開している分、国内雇用にマイナスであったわけで、今の円安で十分に稼いでもらわないと、つじつまが合わない。

このように、円安を歓迎しない財界人の発言は経済合理性を欠いているが、むしろ同じ財界の電力会社のことをおもんぱかった政治的なものと考えれば納得がいく。ちなみに、長谷川代表幹事は、「さらなる円安の可能性は否定できない。原発が稼働していたころに比べて(年間)4兆円くらい化石燃料の輸入が増えている」と述べ、原発再稼働の必要性を訴えている。

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