【文部科学 その6】イノベーション人材の輩出を!
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竹中平蔵氏と、テレビ番組「ニッポン未来会議」で議論した際、竹中氏は英「エコノミスト」誌が出した『2050年の世界 英「エコノミスト」誌は予測する』を引用して、こう述べられた。

「日本が世界で生き残るためには、世界におけるシュンペタリアン競争を日本がリードする存在でなければならない」。さもなければ「一人当たりGDPで中国とそれほどの大差はなくなり、アメリカや韓国の半分程度と、もはや先進国とは言えないレベルに落ち着いてしまう」と言う。だが、希望もある。「労働層の付加価値を高めることで、労働者一人で多くの高齢者を支えられるようになるかもしれない」。

つまり、人口が減少する中、日本の存続を決めるのは、付加価値を高めるイノベーションによるということだ。社会を進化させるのはイノベーションである。イノベーションのない社会は衰退していく。

言うまでもなく、イノベーションの源泉は「人」である。戦後日本の高度成長は、ホンダの本田宗一郎やソニーの井深大といったイノベーターによって成し遂げられた。

ところで、イノベーションとはなにか。これはもちろん、技術の「革新」だけにはとどまらない。ビジネスモデル、文化、社会、いかなる分野にもあり得るものだ。基本的には、常識を疑い、「違うもの、異質なものを組み合わせて新しいものを創ること」である。いわば「破壊と創造」の繰り返しだ。したがって、最も大事なことは、先入観にとらわれない「自由」な発想を持つことである。

そのイノベーター人材の中で、今の日本で深刻なのはイノベーションに必要な理工系人材の量的・質的不足だ。


上のグラフは、日本における工学部受験者数の推移だ。理科に対する子供の興味・関心の低下、大学における理科系学部志願者の減少など、「理科離れ」の深刻さは指摘されて久しい。日本の将来の成長に向けて大きな危機感を抱かざるを得ない。

また、今後は「理工系」の枠組みを離れた学際的なイノベーションができる力や、更にはプログラミング能力も必要となろう。今回の「100の行動」文部科学6では、イノベーション人材の育成に関して提言を行いたい。

1.小・中・高校における理数系教育の強化を!

イノベーションを担う理工系人材の量的拡大を図るには、まず、子供の頃から「理科好き」を増やし、理工系人材の裾野を広げることだ。本来、子供は身の回りの現象に対して「なぜ?」と強い好奇心を持つ、理科好きである。

これが学校での勉強が進んでいくうちに年齢とともに理科が嫌いになる場合が多い。子供自身が「理科離れ」をするのではなく、学校・大人の側が「理科離し」をしているのが実態だ。そもそも、現代の社会人には論理的思考力や課題解決力が必須であり、その能力を高めるには理科や数学の学習が適している。優秀なビジネスパースンを育成する意味でも、理数系教育を強化していくことは重要だ。

1)小学校1・2年生における「理科」の復活を!

1992年実施の学習指導要領で小学校1年生・2年生の「理科」と「社会」が廃止され、「生活科」が設置されたため、今の小学生は3年生になって初めて理科を学ぶ。しかし、生活科の授業内容は、担当教員によって左右され、理科的要素が少なくなることが多い。子供に理科を系統的に学ばせるには、可能な限り早期に理科の授業機会を確保すべきであり、小学校1・2年生の生活科を廃止して「理科」と「社会」を復活させるべきだ。

2)小中学の理科系の教員の拡充・質の向上を!

子供の学力向上は、教員の指導力に大きく依存する。子供の理科離れは、理科好きな教員が少ないことに起因する側面も大きい。実際、小中学校においては、理科系出身の教員が極端に少ないのが実態だ。したがって、教員養成課程における理科系科目の拡充や、理科系学部でも教員免許の取得を可能にするなど、教員の理数教科のスキルアップをはかるべきだ。また、企業や大学の研究者・技術者による出張授業の機会を増やすなど、子供たちの理科への関心を高めるカリキュラムを増やすべきだ。

3)スーパー・サイエンス・ハイスクール(SSH)の拡大を!

2002年度に導入された「スーパー・サイエンス・ハイスクール(SSH)」は、先進的な理数教育を実施する高校を文部科学省が指定し、学習指導要領によらないカリキュラムの開発・実践を可能にする取り組みだ。目的は、将来のグローバルな科学技術系人材を育成するためだ。SSH指定高校の卒業生は理科系の大学・大学院への進学割合も高いなど、成果をあげつつある。

たとえば、SSHに指定されている横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校(YSFH)では、先端科学技術の知識を活用して、世界で幅広く活躍する人材の育成を目標にしている。同校では、理数教育、英語教育に重点を置き、生徒には、先端科学技術の実験や国際交流・海外研修などを通して「驚きと感動」を与えるという。

最大の特長は、ノーベル賞受賞者などのスーパーアドバイザー(計5名。うち常任1名)や、サイエンスリテラシーやサタデーサイエンスなどでの講演や実験・実習などを担当する科学技術顧問(研究機関7名、大学25名、地域に立地する企業等31名。常任はこのうち1名)の支援を得て、教育を展開していることだ。また、海外研修旅行をはじめ、科学研修、語学研修などを計画的に実施し、「サイエンス」および「英語」に優れ、国際社会で活躍する人材の育成を図っている。

成果が上がりつつある、こうしたSSHのベスト・プラクティスを共有・展開していくべきであろう。

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